【怪談】洗ってもアノ匂いが消えない「スニーカーの怨念」! 遺体から盗まれた靴が勝手に…


 最初に仕入れたのは2袋いっぱいの靴である。なんと2日で完売する盛況ぶりだった。国境の市場まで片道4時間かかっても十分旨味のある商売だ。気を良くした彼は、すぐに2度目の仕入れに向かった。順調に買い付けを終え、家に帰り、荷下ろしをして仕分けしていた時だった。「お前、一体何を運んできたんだ? 荷台が臭くてしかたない」と、帰宅した兄が怒りながら問い詰めてきた。

 「何って靴だけだよ」そう答えたが、言われてみると、たしかに何かが腐ったような、すえた匂いが漂っている。あれだけ大量の中古靴を仕入れてきたのだから、いろいろな匂いが混じり合うのも不思議なことではない。兄の怒りを他所に、バンクさんは自分の幸運に興奮していた。仕入れた靴の中に、某有名スポーツブランドの正規品が2足紛れ込んでいたのだ。「この商売、思ったよりいけるかもしれない」期待を膨らませる彼に兄の小言は聞こえていなかった。

 翌日、バンクさんは新しく仕入れた靴を店に陳列し、客が来るのを待った。もちろん靴は売り物だからスプレーで消臭もした。靴は順調に売れていく。儲けものだ。しかし奇妙な感覚を拭えない。なぜか誰かに見つめられている、そんな気がするのだ。客が来た雰囲気を感じて振り返る、しかし誰もいない。普段なら気のせいで片付けられることも、その日はどうにも引っかかってしまう。

 また不思議なことに、真っ先に売れるハズの例のブランド靴がなかなか売れないのだ。結局2足とも売れないまま、その日は閉店時間となってしまった。納得のいかないまま、売れ残った靴を袋に戻す。突然、異臭が鼻腔を刺激した。今朝、すべての靴に消臭をほどこしたはずなのに、売れ残った2足のブランド靴から、すえた匂いが立ち上っている。兄が言っていた匂いはこれのことか..。

 帰宅直後、早速、2足とも丹念に洗って乾かし、一階の上り口に並べておいた。あのイヤな臭いは消えたようだ。兄に話すと「気味が悪いから捨てたらどうだ」と言ってきたが、せっかくの掘り出し物を、そんな理由で手放すわけにはいかない。しかし、その夜、事件が起きてしまった。

 事件について語る前に、バンクさん兄弟が住んでいた家について説明しておこう。それは「タウンハウス」と呼ばれる2階建の家だった。タウンハウスは隣の住戸と壁を共有している。つまり、一戸建て風の住宅である。手頃な価格も手伝い、バンコクの中流階級には人気がある。どうしても隣家の生活音が漏れ聞こえてしまうのが難点である。話に戻ろう。

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