残酷で異常な未解決「名古屋妊婦切り裂き殺人事件」の犯行内容から浮かび上がる奇妙な犯人像

 前編で述べたように、この事件が、犯人の逮捕どころか、候補の絞り込みさえままならなかった理由の1つに、犯人の証拠隠滅レベルが極めて高かったという点が挙げられる。実はこの事件において、被害女性であるBさんは、電気コードで絞殺された上に、腹部を刃物で切り裂かれ、挙げ句、出産目前の胎児を引き出された上に、異物である電話機とキーホルダーを腹の中に詰められるという、常軌を逸した犯行に見舞われているが、犯人はこうしたある意味“ド派手”な残虐行為を働いたにもかかわらず、実は現場となった夫妻宅からは凶器や指紋が一切発見されなかったのだ。

 いきなり外からやってきた人間が、Bさんに対してこのような犯行を行うのであれば、通常ならば、揉みあいになるであろうし、凶器はまだしも、指紋のひとつぐらいは残しそうなものである。それどころか、場合によっては、犯人自身も負傷し、血痕などを残す可能性だってあるだろう。しかしそれがどういうわけか、発見されなかったのである。

 おそらく、指紋がないことについては、犯行時に手袋をしていたのだと推測されるが、事件当日の最高気温は13.7度であり、防寒用の手袋をして徘徊するのは、すれ違う人々の印象に残りやすいため、かえって逆効果だろう。となれば、Aさん宅に入ってから、手袋をしたと考えるのが妥当に思えてくるが、外で手袋をして入るにせよ、部屋に入ってから手袋をするにせよ、それが防寒用のものであれば、殺害されたBさんの目には、いささか奇異な人物として映り、警戒されるのではないだろうか。実際に、Bさんが警戒したかはともかく、少なくとも、ここまで慎重に証拠隠滅を図るような犯人ならば、そう考えるだろう。

 だとすれば、どのような形で、犯人は手袋を「自然な形」で着用していたのか。おそらくこの犯人は、「手袋をしていても不自然ではないような職業」を装うなどして、Aさん宅を訪れた可能性があると推測されるのだ。それは運送業者かもしれないし、電気や水道などの工事関係かもしれないし、新聞配達員かもしれないし、場合によっては、警官やガードマンなどを装った人間かもしれないが、いずれにせよ、仮に犯人がそうした職業の人物に成りすませていれば、仕事用の手袋をしていたとしても不自然ではないし、Bさんがドアを開けて自宅内への侵入を許してしまうのも頷けるのである。

 また、この犯人については、もう1つ気になることがある。それは、「犯行時の行動」という意味で、あまりに“クセが強すぎる”という点だ。というのも、証拠らしい証拠を残さずに現場から離脱し、以後、現在に至るまで逃げ続けることができる慎重さを持っていながらも、Bさんの襲撃に際しては、いきなり自宅を訪問した上で絞殺し、その後、猟奇的な行為を行うという、慎重さとは対極に位置しているような大胆さ、別の言い方をすれば、ある種の支離滅裂な要素を垣間見せているからだ。

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