重力波望遠鏡「KAGRA計画」は“地震予知”に利用した方がいい? “電気的宇宙論”から考察

―― 電気的宇宙論の専門家、平清水九十九が「KAGRA計画破綻の真相」を暴く!

KAGRA(東京大学より)

 『週刊文春』(10月28日号)に衝撃的な記事が載った。日本の科学の粋を尽くして開発中だった「大型低温重力波望遠鏡KAGRA」が重力波を観測できない事態に陥っているという。10年の歳月と190億円の予算をつぎ込んだビッグプロジェクトがとん挫したのである。電気的宇宙論を拡張した電気的地球科学の視点からこのニュースを解説し、当事者らさえ想定していない重力波の実態をご説明しよう。

・「ノーベル賞学者の「KAGRA計画」 重力波の検出は事実上、不可能に」(週刊文春)

 文春の記事を要約するとKAGRAは当初予定されていた重力波に対する感度を得ることができず、その可能性もなくなったというものだ。文春の記事に対する反論も東大宇宙線研究所から出ている。

「重力波の検出は事実上不可能に」や「KAGRA計画は破綻している」とありますが、国際共同観測O4に向けて着々と準備を進めており、国際観測ネットワークの一員として重力波検出を目指しています。(東京大学宇宙線研究所

 KAGRAを運営する東大宇宙線研究所は、文春の記事は間違いであるというスタンスのようだ。しかし、文春の記事を読んでもなぜKAGRAが破綻したというのか、どうもよくわからない。記事中では予算を取るために誇大な目標を書いたなどとあるが、筆者は技術的な部分にしか関心がないので、すでに重力波を観測したと言われているLIGOとKAGRAの違いから、KAGRAの持つ問題点を考えてみた。

■重力波を捉える干渉計の仕組み

 重力波とは、非常に重い天体(ブラックホール・中性子星など)が合体したときに発生すると考えられている。重力波は周囲の空間を曲げるが、その曲がりは水素原子核の1万分の1程度と見積もられている。太陽と地球の距離(1億5000万キロメートル)で水素原子約1個分という小ささだ。これだけの小さな変化を捉えるためには、レーザーを利用した干渉計が用いられる。干渉計とはレーザー光をハーフミラーで直角に2つに分離して鏡で反射、返ってきた光を重ね合わせ、干渉縞からそのずれを見るという極めて正確に長さを比較できる方法だ。有名なのはエーテルの存在を確かめたとされるマイケルソン・モーレーの干渉計がある。

 しかし、マイケルソン・モーレーの干渉計では、光の波長の半分程度である1 nm = 1×10-9 (0.000000001) mしか判別できない。重力波のひずみは1×10-21mなので、千億倍も違うのだ。

 そのため、アメリカの重力波干渉計LIGOでは次のような方法で重力波を捉えている。

1.      干渉計の長さが4km、実際には鏡の間を280~300回反射させているので最大1200kmの長さで波長のずれを観測できる。

2.      レーザーの光を非常に純粋な波長に整えて、高出力を得ている。

3.      反射鏡を精確にするだけでなく、外部のノイズから絶縁するため、浮かした状態でアクティブに制御している。

LIGOの概要は「LSC」より

 3つめのノイズ除去を「アウトプットモードクリーナー」と呼ぶ。ノイズを除去する重要な装置だ。KAGRAでは予算の期限に間に合わなかったのかアウトプットモードクリーナーを設置しないまま観測が開始されたらしい(文春の記事から)。重力波を観測するうえで問題となるノイズには次のような原因が考えられる。

1.      量子ノイズ

2.      地球科学的ノイズ

3.      地球重力によるノイズ

4.      熱的ノイズ

5.      ブラウン運動によるノイズ

6.      光学的熱ノイズ

画像は「KAGRA 大型低音重力波望遠鏡」より

 最も大きいのが量子ノイズとされるが、これはレーザー光源と反射鏡が原因なので、取り除くことが困難だ。鏡にレーザーを当てると表面に電界が生じる。レーザー光は出力に微小の強弱があるため、生じた電界が鏡を振動させ、ノイズになるのだ。量子ノイズを軽減するためには、レーザーを安定化して、反射鏡の重量を増やし電界の反動を抑えるしかない。

 地殻の変化、地上重力の影響、熱雑音などを押さえることも干渉計の感度を上げる要因になる。熱雑音を抑えるためにKAGRAもLIGOも検出装置をきわめて低い温度に保っている。また、地殻からの振動を伝えないために、吊り下げた振り子を数段重ねて、振動を抑えている。鏡本体にアクチュエーターを据えて、アクティブに振動を抑えることも行われている。

 このように何重にもノイズ対策をしても得られるデータはノイズまみれだ。そのためノイズまみれのデータから重力波と思われるパターンを抽出するフィルタリングが必要になる。つまり、重力波が発生する現象を想定して、そこから発生する重力波がどのようなパターンを描くのかを予想、デジタル的にノイズの海から重力波と思われる信号をすくいあげるのである。現在予想されている重力波の発生は1つは「2つのブラックホールが回転しながら衝突・合体する場合」、そしてもうひとつは「超新星爆発のように巨大な恒星が一気に質量を放出する場合」である。フィルタリングはデータ解析をする上での重要な技術だ。

 実際、LIGOはすでに50個もの重力波を捉えているが、いずれも予想されるパターンを抽出したものだ。パターンは100Hz付近の非常に低い振動として捉えられている。LIGOには3000km離れた二カ所に観測所があるため、ほぼ同時に同じパターンが現れることが重力波である証拠にもなっている。

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