重力波望遠鏡「KAGRA計画」は“地震予知”に利用した方がいい? “電気的宇宙論”から考察

■KAGRAの何がダメなのか?

 重力波干渉計の感度を示す指標にMPc(メガパーセク)という単位が使われる。パーセクとは距離で1Pcは約3.26光年だ。LIGOは130MPcという感度を得ており、これは4.2億光年離れた場所で起こったブラックホールの合体を観測できるという意味だ。KAGRAの現在の感度は1Mpcであり、これは320万光年先で起きた重力波を感知できる。

 しかし、320万光年では「1万5千年以上待たないと観測できません。」(文春の記事より)というくらい感度が悪い。1回の重力波の観測に1万5千年かかっていては、とてもじゃないが使い物にならないからだ。

 では、LIGOとKAGRAではいったい何が違うのだろうか? すべてではないが目についた違いをリストアップしてみた。

LIGO       KAGRA

アームの長さ  4km       3km

設置場所   地表    地下200m

鏡の重さ    40kg       23kg

鏡の材質   シリカガラス サファイヤ単結晶

鏡の制御   圧電体    磁力

検知器の温度  ?     -253℃

レーザー出力  25W    3000W

 アームの長さはKAGRAが3kmと1km短いが、すでに50Mpcの感度を出している重力波干渉計「Virgo」がKAGRAと同じ3kmなので、ここは問題ないと思われる。設置場所に関してはKAGRAのほうが地下にあるのでノイズでは有利なはずだ。鏡の制御に関してはLIGOが圧電体で行っているのに対してKAGRAは磁力で行っていると書かれている。具体的に磁力でどのようにしているかはわからなかったが、LIGOの圧電体による制御は、同じ技術が原子間力顕微鏡などで使われていることから、原子レベルの制御が行われており、十分に成熟した技術であることがわかる。

 大きく違うのは、反射鏡に使われている鏡の材質と重さだ。KAGRAの鏡はLIGOの約半分の重さしかない。鏡の重量は重いほど量子ノイズが減少するので、ここに問題があるのかもしれない。KAGRAの鏡は当初30kgを目標としたが、取り出せるサファイア結晶の制限から23kgに減ったという。サファイア結晶の加工は非常に難しい面もあり、KAGRAでは反射してきたレーザー光のピントが合わないという問題が起こっていた。(「重力波天文学・物理学の現状と未来」道村唯太)

問題の鏡。画像は「KAGRA 大型低音重力波望遠鏡」より

 KAGRAのサファイヤ反射鏡は4個で2億円するらしい。「すばる望遠鏡」の23トンの主鏡から比べれば、安いと言えるかもしれない。しかし、たった2億円が肝心の感度に影響しているとしたら、これは問題だろう。十分に検証してもらいたいものだ。

 KAGRA計画ではLIGOで経験を積んだ研究者が途中でやめていたこともあった。こうした特殊な観測機器では経験が性能に関わることが多い。

 ところで、筆者は技術的な問題はいずれ解決できるだろうと考えている。日本の技術力はまだまだ十分な能力を持っていると思うからだ。このまま開発が進めば、数年後にKAGRAがLIGOに肩を並べていることは夢ではないと思う。しかし筆者が指摘したい問題の本質は別のところにある。

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