他惑星にある新しい物質「超イオン氷」実験で再現成功! 科学界に大インパクト
海王星や天王星などのガスでできた“ガス惑星”の奥深くにはいったい何があるのか? 最新の研究によればそこにはこれまで知られていなかった水の様相である「超イオン氷」があるというのだ――。
■「超イオン氷」を確実に作成、維持する方法が示された
水の状態には液体、気体(水蒸気)、固体(氷)の3種類があるというのが一般的な理解だが、水は実際には12以上の異なる構造を形成する可能性があるといわれている。そして今回、水の様相に新たなフェーズが追加された。それは「超イオン氷(superionic ice)」だ。
超イオン氷は、海王星や天王星のような惑星の奥深くにあり、非常に高い温度と圧力で形成されている。以前に実験室でほんの一瞬の間、超イオン氷の状態を再現することに成功しているのだが、今回の「Nature Physics」で発表された新しい研究では超イオン氷を確実に作成、維持し、検査できる方法が示されることになった。
シカゴ大学の研究教授であり、アルゴンヌ国立研究所「Advanced Photon」のビームライン科学者である研究の共著者、ヴィターリ・プラカペンカ氏は「いくつかの強力なツールのおかげで、物質の新しい段階を構成するこの新しい氷の特性を非常に正確にマッピングすることができました」と語る。
プラカペンカ氏と彼の同僚は、アルゴンヌ国立研究所の大規模な加速器である「Advanced Photon Source」を使用して、電子を光速に近いスピードに加速させて実験を行い、作成した氷が新しい段階にあることに気づき、その構造と特性を正確にマッピングすることに成功した。それこそが超イオン氷なのである。
「これは新しい物質の状態なので、基本的には新しい素材として機能し、私たちが考えていたものとは異なる可能性があります」とプラカペンカ氏は説明する。
理論科学者はこの段階を机上で予測してはいたのだが、水が50ギガパスカル以上の圧力(ロケット燃料の内部の状態とほぼ同じで、揚力のために爆発する)に圧縮されるまではこの段階は現れないと考えていたため、この実験結果は驚くべきものであった。実験で可能な圧縮は20ギガパスカルにとどまっていたのだ。
「時々このような驚きがもたらされます」とプラカペンカ氏は驚きを隠せない。
■超イオン氷が科学界に与える多大なインパクト
氷の相のさまざまな段階が生成する正確な条件をマッピングすることは、とりわけ、惑星の形成を理解し、他の惑星で生命を探す場所を理解するために重要であるという。科学者たちは、海王星や天王星の内部、そして宇宙の他の場所にあるような他の寒くて岩だらけの惑星にも同様の条件が存在すると考えているのだ。
これらの氷の特性は、生命をホストする能力に大きな影響を与える惑星の磁場で役割を果たす。地球の強力な磁場は、有害な入射放射線や宇宙線から我々を保護しているが、一方で不毛の惑星である火星や水星の地表はそれらに対してほとんど無防備である。磁場の形成に影響を与える条件を知ることで、研究者は生命を宿す可能性のあるほかの恒星系の惑星を探すことができるようになるということだ。
プラカペンカ氏によると、導電率、粘度、化学的安定性など、水が塩や他の鉱物と混ざり合うと変化する側面は他にもたくさんあり、これは地表の深部でよく起きていることであるという。「これはもっと多くの研究を刺激するはずです」とプラカペンカ氏は指摘する。
生命を宿す惑星を一刻も早く見つけたいものだが、その重要なヒントとなるのがこの超イオン氷であるようだ。新たに発見された水の様相である超イオン氷が科学界に与えるインパクトが今後どのような展開を見せるのか注目していきたい。
参考:「University of Chicago」ほか
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2024.10.02 20:00心霊他惑星にある新しい物質「超イオン氷」実験で再現成功! 科学界に大インパクトのページです。水、地球外生命体、加速器、天王星、海王星、超イオン氷などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで