”コカイン漬けのブタの心臓”がヒトに移植されていた!「よく鼓動するから」
今月10日、世界で初めて豚の心臓を人間に移植する手術が行われたことは日本のメディアでも報じられているが、使用された心臓が“コカイン漬け”だったという衝撃の事実が明らかになった。
米メリーランド大学医療センターで「異種移植」を受けたのは57歳のデイヴィッド・ベネットさん。心臓の状態が悪く、これがラストチャンスだったという。術後の状態は良好で、自発呼吸もできているとのことだ。
「VICE」(1月22日付)によると、この異種移植の成功の裏にはパキスタンで生まれ育ち米国で移植技術を学んだムハンマド・モヒディン医師の存在があったという。モヒディン医師は30年にわたって異種移植技術を研究してきたが、イスラム教徒であることから、宗教的な理由で豚の臓器を使用することには多くの困難があったという。イスラム教では豚肉を食べることはハラーム(禁忌)とされているため、家族から大きな反発を受け、「せめて他の動物を使って欲しい」と懇願されたそうだ。しかし、研究すればするほど豚の心臓の遺伝子成分が人間にとって理想的であることがわかり、悩みはより深いものとなった。
「私はイスラム教のすべての教義に従おうとしているので、その懸念は常に頭の片隅にありました。だから、豚を使い続ける理由を見つけようとしました」(モヒディン医師)
そこでモヒディン医師は世界中の宗教指導者にその不安を打ち明け、相談したという。そして「人の命を救うこと以上に神の目にかなうことはない」という最終的な結論を見出し、豚の臓器移植に踏み切ったとのことだ。
だが困難はそれだけではなかった。移植のための心臓を長持ちさせるためにコカイン入りの薬剤カクテルを使用する必要が出てきたのだ。スウェーデンの会社が販売しているコカインに加えてコルチゾールやアドレナリンなど約10種類のホルモンのカクテルは、移植用の心臓の使用期限を24時間に延長する効果があり、移植時の心不全を防ぐ効果も期待できるという。ただその科学的なメカニズムは不明だとモヒディン医師は話している。
「この溶液を使っていなかったときは、移植手術は48時間以内に失敗していました。しかし、それで心臓を浸したところ、心臓の保存状態がよくなり、非常によく鼓動するようになりました」(同)
ただ溶液にはコカインが含まれていることから、米麻薬取締局の長い審査プロセスを経なければならないという難点がある。とはいえ、その効果は抜群であるから、心臓移植において広く使用されるべきだとモヒディン医師は主張している。
今回の移植手術が本当に成功したと言うためには長期的な結果を見なければならないが、もし有効な方法として確立されれば、臓器不足の解消に貢献し、多くの移植待ち患者を救うことができるようになるだろう。そうなることを心から願いたい。
参考:「VICE」、ほか
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