なぜ我々には誕生時の記憶がないのか? 科学者がたどり着いた戦慄の最適解
■自己意識と言語能力の欠如が原因か
我々が特に印象強く記憶しているのは、主に人生の一大イベントに関する記憶である「自伝的記憶(autobiographical memory)」であり、その一方で、たとえばスーパーの駐車場のどこに車を停めたかなどの記憶は、買い物を終えてスーパーを出ればすぐに忘れてしまうだろう。
したがって、乳幼児期の記憶は自伝的記憶ではないために思い出せないのではないかという疑いも生じてくるが、その点はまだよくわかってはいない。
現状で言えるのは、自伝的記憶にはある程度の自己意識が必要であるということだ。つまり、自分を客観視できるからこそ、自叙伝的なストーリーが形成できるのである。
そこで研究者は「鏡に映った像を自分と認識する能力」を調べる「ミラーテスト」を乳児に対して行ったのだが、18カ月未満の乳児は、鏡を見て微笑むもののそれが自分であるとは認識していなかった。自意識の芽生えが確認できたのは、平均して18カ月から24カ月の間であったのだ。したがって2歳以前の記憶がないのは、まだ自己意識がないためであるという説明も成り立つ。
幼児期健忘についてもう1つ考えられる説明は、乳児は生後2年の後半まで言語運用能力がないため、後で思い出すことができる自分の人生についての物語を作れないことからくるという解釈だ。
また、記憶において重要な役割を担う脳の領域である海馬が乳児期には完全には発達していないことも挙げられる。
このような要因が組み合わさって幼児期健忘が起きているとも言えそうなのだが、専門家は現在もさらに研究を続けている。幼児期健忘の謎が解明された暁には、ひょっとすると乳幼児期の記憶をよみがえらせる手段もまた見つかるのかもしれない。
参考:「The Conversation」ほか
文=仲田しんじ
※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。
人気連載
“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】
現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...
2024.10.02 20:00心霊なぜ我々には誕生時の記憶がないのか? 科学者がたどり着いた戦慄の最適解のページです。記憶、脳、言語、自己意識、幼児期健忘、発達心理学などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで