中国共産党が「表情から忠誠心を評価する」AI開発で今後どうなる? 日本人IT企業家による想定外の見解
管理・監視社会化が進む中国。すでに全土に数億台のカメラが設置され、SNS上の発信内容も徹底的にチェックされているという。そして今、管理・監視技術にAIが組み込まれ、表情を読み取るだけで中国共産党への忠誠心を測定できるシステムが開発されたという。
北京在住の「タイムズ」紙の記者ディディ・タン氏によると、7月1日に合肥総合国家科学センターのAI研究者が同システムに関する発表を動画付きでインターネット上に公開したが、何らかの理由ですぐに削除されたという。その内容は、次のようなものだった。
・ 被験者は「スマート政治教育バー」と呼ばれる部屋に入り、大型スクリーンの前で中国共産党の思想や政策に関する記事を読む。監視カメラについたAIが、被験者の表情から共産党に対する忠誠心・集中力・認識度を判定する。
・ AIは中国共産党の思想と政治教育を浸透させるための助言もできる。
・ 合肥総合国家科学センターは、研究チームの3人の共産党員に、同AIシステムを使って実験済みである。
・ AIは中国共産党員が「党に感謝し、党の指針に従い、党をフォローする」ように、中国共産党の結束を固めることもできる。
今後、中国共産党は当システムを街に設置し、国民一人ひとりの思想・忠誠心を診断するつもりなのだろうか。これに加えて、同紙の報道によると、すでに杭州市の工場労働者たちは脳波から感情を読み取るヘルメットを着用させられていたり、中国では「AI検察官」まで開発されているなど、不気味な兆候が見られるとのことだ。
■中国に詳しいIT企業家の見解は?
筆者は中国の真意を探るため、現地の政治に通じておりビジネス上のつながりも深く、中国人の妻をもつIT企業家・平和活動家・ミュージシャンのニッキー・マツモト氏に話を聞いた。なんとマツモト氏は、前述の報道に疑問を呈した。まず、AI監視システムについては次のように語る。
「本来の脳波検査とは頭に電極を付けて行うものです。カメラで脳波の検知(と同じような分析が)できるという話であれば世界的な大発明となり、ノーベル賞も間違いないでしょう。『実験の様子が今は削除されている』だと、真実だとしても確認のしようがありません」
また、 杭州市の工場労働者の脳波を測るヘルメットに関しては、このように述べる。
「中国では、過去に食品工場労働者が異物を混入させ、日本でも話題になった『毒入り餃子事件』が起きています。そうした事を考えると、企業が安全のために労働者の脳波を検査したという事ではないでしょうか。例えばアメリカでは、核爆弾の材料を製造する工場で一般労働者を雇っていますが、彼らはその工場で働いている事さえ秘密にしなければならず、漏らした場合は逮捕されるという契約書にサインを求められたという事例があります。そして労働者は被爆し、指や鼻が欠損してしまっても泣き寝入りするしかありませんでした。世界中でそうした事例がある中、安全性確保のために労働者の脳波を測定し、精神状態を調べるという取り組み自体は企業方針ですから、大きな問題にはならないでしょう」
「AI検察官に関しては、捜査や裁判で余計な感情が入らないように、今後ますますAIが用いられる事になるでしょう。これはむしろ当然と言うか、歓迎されるべきだと思います」
「経済面において欧米は、いずれ中国に抜かれる状況にあります。また世界では、アフリカ諸国のようにアメリカに変わるリーダーとして中国を頼りにする国も増えています。中国はハイテク技術を積極的に取り入れ、世界の最先端を走ろうと必死です。行き過ぎた管理社会になるのでは? という懸念もあるでしょうが、欧米はそういった負の側面を全て中国のイメージに重ねてしまおう、という戦略を持っています。私は(中国が先陣を切り)これから到来するAI社会は、より良いものになると期待しています」
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2024.10.02 20:00心霊中国共産党が「表情から忠誠心を評価する」AI開発で今後どうなる? 日本人IT企業家による想定外の見解のページです。中国、監視社会、新疆ウイグル自治区、AI、企業家などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで