埋葬後に蘇った女が帰宅、対面した夫は…! 専門家が真実と認定、北アイルランド最恐&永遠の未解決事件

 心肺停止などの臨床的な死亡状態から生還する人々は少なくないが、墓に埋葬された後に復活したレアケースは“ホラー”や“都市伝説”の範疇となって語り伝えられることになる。その中でも1705年にアイルランドで起きたマージョリー・マッコールの事例は、関係者と目撃者が多い不滅の伝説だ。

■高価な金の指輪を着けたまま埋葬された女性

 1700年代、現在の北アイルランド・ラーガンにあるチャーチプレイスと呼ばれる場所に、マージョリー・マッコールという名前の女性が住んでいた。彼女は控えめな性格で、医者と結婚していたが、特に裕福ではなく質素で慎ましい生活を送っていたという。

 その人生は普通であれば簡単に忘れ去られてしまうような平凡な生涯であったが、一連の奇妙な出来事により、彼女は最も有名なアイルランドの伝説の1つとして永久に不滅の存在になったのだ。

 1700年代のアイルランドはきわめて住みにくい場所で、全土が飢饉と疫病によって荒廃し、国民の多くは病や飢えで命を落とす恐怖の下での生活を余儀なくされていた。

 夫妻が置かれた状況も例外ではなく、ある日、マージョリーは高熱を発する病に倒れ、夫は彼女が何らかの感染症にかかっていると診断し、村の僻地に隔離したのだった。手厚い看病を受けられることなく彼女の状態は必然的に悪化し、1705年に夫に看取られながら亡くなった。

 彼女の病気が他の人に広がるのではないかと周囲が恐れたこともあり、急いで葬儀が行われ、チャーチプレイスの自宅からそう遠くないシャンキル教会墓地にすぐさま埋葬された。

 決して富裕ではなかったマージョリーだったが、生前から非常に立派で高価な金の指輪を常に着けていることで知られていた。結婚指輪ではなさそうなその指輪を彼女がいつ、どこで手に入れたのか誰も知らなかったが、その値打ちはひと目見て誰にもわかった。

 埋葬の前に指輪を外そうとする試みが行われたのだが、死後の彼女の指はひどく腫れ上がっていたので、どんなに頑張っても誰も外すことができなかった。そこで仕方なく指輪を着けたまま埋葬されたのだった。

 マージョリーが高価な指輪を着けたまま埋葬されたという情報はすぐさま地域に広がった。

 この時代にも墓荒らしはいたが、不気味なことに復活主義者と呼ばれる人々もいて、遺体を略奪して復活させる試みが一部のオカルティックな医師などの間で行われていたのだ。そして復活主義者のグループの1つが、マージョリーの遺体に目をつけたのだった。

■掘り起こされ帰宅したマージョリー

 マージョリーの墓の場所を突き止めた復活主義者の墓荒らしたちは、日没後にさっそく仕事に取りかかった。

 掘り起こした彼女の指には確かに金の指輪があり、月明かりで輝いていた。しかし埋葬の直前と同じく、指輪を指から取り外すことができなかった。

 そこで1人がナイフを取り出し、指輪が着いた指を切落とそうとした。指が1本なくても復活には問題ないと考えたのだ。

 指の皮膚がナイフの刃で切り裂かれると、まだ生きているように鮮血が溢れ出たのだが、なんと次の瞬間、マージョリーはあえぎ声を発して目を開け、起き上がって負傷した指を眺めたのである。

 驚いた墓荒らしたちは叫び声を上げて逃げ出したといわれているが、別の言い伝えではあまりのショックで心臓発作を起こして死亡した者がいたともいわれている。

 その後、マージョリーは悪夢から抜け出したかのように墓から這い出て、自宅に向かって町を歩き始めた。

 土まみれの頭髪で、汚れたガウンを着て歩く彼女を目撃した者は、お化けが出たと一目散に退散し、家に駆けこむと厳重にドアに鍵をかけた。

 彼女は静かな足取り動きで自宅へと向かい、遂に辿り着いた我が家では、夫と子どもたち、さらに親戚たちが卓を囲んで夕食を楽しんでいた。

 彼女はドアをノックする。

 この時、興味深いことに夫のジョンは玄関に向かう前に子どもたちに「きみたちお母さんがまだ生きているのだとすれば、今ノックをしているのはお母さんだよ」と言ったのだ。どんなつもりで言ったのかわからないが、その言葉は現実のものとなった。

 ジョンはドアに誰がいることを確認し、ドアを開けると、死んだはずの妻がそこに立っていた。土で汚れた顔で夫を見つめ、指から血を滴らせていた妻の姿を見てあまりにも驚いたジョンは失神し、その場に倒れ込んでしまった。そして哀れにもそのまま亡くなってしまったのである。

 あまりにも奇妙な展開で“未亡人”になってしまったマージョリーは再婚して数人の子どもをもうけ、“2度目の死”まで静かで平穏な生活を送り、その後、最初と同じ墓に永久に埋葬されたといわれている。

 シャンキル教会墓地の彼女の墓石には「一度生き、二度埋葬された」という碑文が刻まれている。墓石は人気のある観光名所となる一方、その後も何年にもわたって頻繁に墓荒らしの標的ともなった。

 マージョリー・マッコールが墓からよみがえったという話はアイルランドで人気のある“都市伝説”になり、話がどれほど真実であるかについては長い間議論されてきた。

 地元の歴史家ジム・コンウェイはこの事件を広範囲に調査し、それが真実であるとの結論に達している。彼が公共記録局(PRONI)に保管されている教区の記録を調べたところ、ラーガンで9人のマージョリー・マッコールという名前の人物が死亡したことが記録されており、そのうち3人はジョン・マッコールと結婚していたと記されているが、1705年にマージョリー・マッコールが死亡したという記録はなかった。コンウェイは、当時起こっていた飢饉と疫病のために、この時期の多くの記録が失われたり曖昧になったりしたことを指摘している。

「マージョリー・マッコールは、彼女の墓石に書かれているように、一度生きたが二度埋葬されたと言われています。物語が神話であろうとなかろうと、真実に懐疑的な人はたくさんいますが、私の研究に基づいて、その話は真実であると確信しています」(ジム・コンウェイ)

 それが本当かどうかにかかわらず、墓石は今日でも見物することができ、興味深いことにマージョリーの幽霊がずっと墓地を歩き回っているとも言われている。

 もちろん話が過剰に脚色された“都市伝説”であったとしてもおかしくないが、最初の死亡診断から感染症が疑われ急いで埋葬された時、実はまたマージョリーは生きていたのだろうか。また、この話に登場する金の指輪に何らかの秘密があったのだろうか。今となっては検証は困難をきわめるが、ひょっとすると臨床的な死亡状態から数日を経て生還したきわめて珍しい一件であったのかもしれない。

参考:「Mysterious Universe」、ほか

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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