「50代から幸福度が増す」は嘘! 幸福のU字曲線は存在しないことが発覚
多くの研究によると、平均して中年になるにつれて幸福度は下がり、40代で底を迎えると、定年退職に向かうにつれて回復していくといわれている。このいわゆる「U字型の幸福曲線」は広く知られているが、どうやら事実とは異なるようだ。
英レスター大学社会学部准教授のデイヴィッド・バートラム氏が、欧州社会調査のデータを分析したところ、多くの人が高齢期には健康状態の悪化や家族との死別など、加齢に伴う困難に直面し、幸福度が実際には低下することがわかった。バートラム氏が調査した30カ国のうち、ほぼ半数の国では幸福のU字曲線は見られなかった。
では、なぜこのような違いが出るのだろうか?
先行研究では、幸福に影響を与える他の要因から年齢の影響を切り離すことを意図して、中高年期における富と健康が同程度の人々を比較するようデータが調整されていた。しかし、ふつう高齢になると貧しくなり、健康状態も悪くなることが多いため、この調整は誤解を招く可能性があるとバートラム氏は話す。こうした調整を行わないと、多くの国で加齢に伴う幸福度が低下した。
この低下は、福祉があまり機能していない国でより顕著になる傾向があった。特にトルコでは、幸福度(0から10までのスケールで測定)が定年時の6.4から高齢者では5.0以下まで平均的に低下。エストニア、スロバキア、チェコ共和国でも、30代前半から幸福度は着実に低下していたという。
一方、福祉に厚いオランダは30歳代から幸福度が上昇し、高齢になっても安定的に推移、また同じく福祉国家であるフィンランドでは、人生を通じて幸福度はほぼ一定で、0から10までの尺度で8以上となっていた。
以上のことから普遍的な幸福のパターンというものはなく、社会的条件によって中高年気の幸福度には大きな違いが出ることがわかった。
人は年を重ねるごとに知恵がつき、欲望に惑わされず、内なる幸福を実現するという魅力的なアイデアはあるが、実際のところ多くの人は年を取ると大きな困難に直面し、その時に大きな幸せを感じられなくなるようだ。
病気になったり、死別を経験したり、友人を失ったりしなければ、幸福は年齢とともに増加するかもしれない。しかし、そのような理想的な人生は、統計的調整によって得られるものでしかなく、所詮は「幸福のU字曲線は統計的調整の産物」(バートラム氏)なのだ。
多くの国で幸福のU字曲線が消滅するということは、多くの人が加齢とともに幸せにはなっていないことを示す。今が辛くても老後にはある程度の幸せが手に入るという夢物語は捨て去った方が良いだろう。老後は現状よりもさらに悲惨になる可能性の方が高い。あるいは福祉国家への移住を検討してみるのも悪くないかもしれない。
参考:「The Conversation」、ほか
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2024.10.02 20:00心霊「50代から幸福度が増す」は嘘! 幸福のU字曲線は存在しないことが発覚のページです。高齢者、幸福、統計学などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで