スマホは会話を盗聴しているのか? Google、Facebook、Amazon… 英紙が検証結果を公開

 計画中の海外旅行について通話の中でそれとなく口にしてからというものの、スマホ画面に海外ツアーの広告表示が増えたような気がする――!? はたしてスマホはユーザーが発する言葉を逐一聞いているのだろうか。

スマホは“盗聴”しているのか?

 スマホがユーザーの声をすべて聞いて録音しているという、まことしやかな話は本当なのか? 英紙「Daily Mail」の記者が検証していて興味深い。

 検証チームは22歳のロビンという名前の架空の男性を“キャラ設定”し、彼が使うAndroid搭載のSamsungのスマホを新たに購入してGoogleアカウントとFacebookアカウントを作成した。

 設定されたロビンの最近の関心事はヨーロッパへの旅行と、自宅の床の張り替えということで、スマホの近くでそれらに関する発言を何度も繰り返し行ったのだ。その一方で、それらに関することでネット検索や音声アシスタント機能を使うことを厳に戒めた。もしもスマホがユーザーの声を聞いていてそれを活用しているのだとすれば、そのうちにスマホの画面に海外ツアー商品や、内装工事関係の広告があらわれてくるかもしれない。

スマホは会話を盗聴しているのか? Google、Facebook、Amazon… 英紙が検証結果を公開の画像1
画像は「Pixabay」より

 ロビンの声だけでヨーロッパ旅行と床の張り替えについて数日間、スマホのかたわらで発言してみたのだが、少なくともこの日数ではスマホの広告に海外ツアー商品や内装工事の広告が表示されることはなかったということだ。

 イギリスのコンピュータセキュリティ会社「Barrier Networks」でネットワークセキュリティを管理しているジョーダン・ シュローダー氏は「Daily Mail」に、これらのデバイスは必要な情報収集を個々のユーザー単位で行っているのではないと語っている。

 個人に紐づけた音声情報の収集は莫大なデータ量になり、収集したところでコストに見合わないということだ。そもそもアカウントを作成した時点でGoogleなどはすでにその個人に関するかなりのことを知っているので、音声情報のデータはほぼ無価値であるとシュローダー氏は説明している。

 したがって発言や会話がスマホに“盗聴”されていると心配する必要はほぼないようである。

やろうと思えば“盗聴”できる

 ひとまずホッとひと安心ということになるのかもしれないが、もちろん音声アシスタント機能を使ったり、ネット検索をしたりすれば話はまったく違ってくる。

「オーケー、Google」や「ヘイ、Siri」などの“ウェイクワード”が使える状態にあるということは、デバイスは常にユーザーの声を聞いているからである。

「音声アシスタントが“キーワード”を聞くことができるようになっている場合、Google、Apple、およびAmazonは常にあなたの話を聞いています。サウンドのサンプルは、アルゴリズムを改善するための分析のためにサーバーに定期的に送信されます。そしてこれらのサンプルは、分析のためにアルゴリズムに送信する前に、音をより適切に分類するために最初に人間の担当者に送られることがあります」(シュローダー氏)

 考えてみれば当然のことだが、音声アシスタント機能を使っている限りはその付近での会話や発言は“盗聴”されていることになる。そしてやろうと思えばそれを人間のスタッフが聞くこともできるのだ。

 Google、Apple、Amazonもこうして集められた“無価値な”データは定期的に消去しており、たとえばGoogleアカウントではユーザーについてログに記録しているすべてを確認できるページを提供するなど透明化を担保している。

スマホは会話を盗聴しているのか? Google、Facebook、Amazon… 英紙が検証結果を公開の画像2
画像は「Pixabay」より

真のリスクは“ターゲット”にされること

 シュローダー氏によれば本当のリスクは、ユーザーがダウンロードした可能性のある不正なアプリにあると言及している。その多くはユーザーに気づかれないような方法で、そのアプリがデバイスのマイクやカメラにアクセスすることを許可してしまうように設計されているという。疑わしいアプリは削除するなどの配慮が求められていることは間違いない。

 そして最大のリスクは、個人が特定の目的のために“ターゲット”にされた場合であるとシュローダー氏は説明する。

 その個人が行っているすべてのことを知ることに価値がある場合、この種の対象を絞った監視は、経済的および技術的により理にかなっており、多くにとっての無価値なデータは一転して収集すべき価値のあるデータとなるのである。

 通話を傍受し、位置を追跡し、その活動を“監視”できるスパイウェア「Pegasus」は実際にいくつかの国でターゲットとなった人権活動家、ジャーナリスト、政治家に使用されていることがわかり問題になっている。

スマホは会話を盗聴しているのか? Google、Facebook、Amazon… 英紙が検証結果を公開の画像3
画像は「Pixabay」より

“ターゲット”にされてしまった個人がどうやって個人情報を守っていけばいいのか。それは今やプライバシーの問題を超えた社会問題になっていると言って過言ではないのだろう。

参考:「Daily Mail」ほか

関連キーワード:, , ,

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

仲田しんじの記事一覧はこちら

※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。

人気連載

danger
イタコ、霊媒、エロ祈祷…エログロナンセンスな超常現象ドキュメンタリー『恐怖・怪奇・悪霊 超常現象の世界』とは?

イタコ、霊媒、エロ祈祷…エログロナンセンスな超常現象ドキュメンタリー『恐怖・怪奇・悪霊 超常現象の世界』とは?

※こちらは2020年の記事の再掲です。 ――絶滅映像作品の収集に命を懸ける男・...

2024.02.27 08:00奇妙
青酸カリで人を殺すのは意外と難しい。推理小説のトリックは概ね間違いだった!?

青酸カリで人を殺すのは意外と難しい。推理小説のトリックは概ね間違いだった!?

【ヘルドクター・クラレの毒薬の手帳 第1回、青酸カリ/後編】  ※本記事は2...

2024.02.07 08:00科学
【毒薬の手帳】ググっても出てこない、青酸カリの本当の話

【毒薬の手帳】ググっても出てこない、青酸カリの本当の話

本記事は2015年に掲載された記事の再掲です。 【ヘルドクター・クラレの毒薬の...

2024.02.06 08:00科学
九州地方で正月に行われていた飲尿儀式の伝統があった!?

九州地方で正月に行われていた飲尿儀式の伝統があった!?

※本記事は2018年の記事の再掲です。 【日本奇習紀行シリーズ】 九州地方 ...

2023.12.30 08:00奇妙
運気を爆上げして「引き寄せの法則」を発動!! 激動の時代を生き抜くための波動グッズ3選

運気を爆上げして「引き寄せの法則」を発動!! 激動の時代を生き抜くための波動グッズ3選

癒しフェア 2024in大阪 広瀬学 講演 「アリス矢沢透のなんでも応援団!内...

2024.04.19 10:00スピリチュアル

スマホは会話を盗聴しているのか? Google、Facebook、Amazon… 英紙が検証結果を公開のページです。などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで

トカナ TOCANA公式チャンネル