クローゼットの中で育てられた少女… 予想外の現在に唖然

 問題のある両親によって6年以上もの間、監禁されていた少女がいた。しかもその監禁場所はクローゼットの中だったのだ――。

里親から取り戻した娘をクローゼットに監禁

 世に大きなショックを与える監禁事件だが、かつて米テキサス州では6年以上もクローゼットの中に閉じ込められていた監禁少女がいたのだ。

 バーバラ・カルフーンとケネス・アトキンソンの夫妻の間には6人の幼い子供たちがいたのだが、そのうちの4人はバーバラがそれぞれ別の男と関係を持って生まれた子供だった。

 その4人のうちの1人の少女、ローレンは生後すぐに養子として里親に引き取られたのだが、どういうわけか気が変わったバーバラはローレンを法的な手段で里親から取り戻し、なんとクローゼットの中に閉じ込めたのである。

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ローレン・ガバナー 「Bugged Space」の記事より

 いったいどういうことなのか。実は連れ戻したものの泣き止まずいっこうに心を開くことがないローレンに困り果てたバーバラは、一転してローレンを虐待しはじめたのだ。そして子供たちの中でローレンだけを家のクローゼットに閉じ込めたのである。

 バーバラはほかの子供たちに家にローレンがいることを絶対に話してはならないと口止めし、ローレンをクローゼットの中に1日の大半の時間監禁したのだ。

 ローレンには最低限の食事しか与えられず、トイレや入浴なども行かされず時には暴力や性的虐待を受けていたことがわかっている。この時期にローレンの身体についた傷跡は今も残っているという。

 その後の調べでほかの子供たちは夜中にローレンの泣き声や叫び声をよく聞いていたことを明かしたが、両親が彼女を性的に虐待していることは知らなかった。

 すでに6年以上にもわたってローレンを監禁して虐待する妻の異常な行為を容認していた夫のケネスだったが、バーバラがほかの男と付き合って遊び歩いていることを知ってショックを受け、この異常な家庭生活を終わらせることを決意したのだった。

 ケネスは隣人に自分たちの家族の異常な実態をすべて話すと、すぐに警察に通報され、駆けつけた警察官によってローレンが保護されたのである。

8歳で体重は11キロほど

 保護された時点で8歳のローレンはガリガリに痩せていて体重は11キロほどで、身体は汚物に覆われ、髪はボサボサでシラミが湧いていた。

 ローレンはすぐに栄養失調の治療のためにダラスの小児科病院に運ばれた。ローレンの体はひどく衰弱しており、食道は糞便、カーペットの繊維、およびプラスチック廃棄物によって閉塞されていたため、医師によって栄養補給が慎重に行われた。保護されないままであったなら近いうちに命を落としていた可能性が高かったという。

 また悲しいことに、ローレンは椅子に座ることもできず、基本的な読み書きができなかった。彼女はトイレの使い方などの基本的な衛生に関する訓練を受けておらず、身の回りのモノや太陽の呼称なども知らなかった。

 夫妻は逮捕され、2002年にバーバラとケネスは終身刑を言い渡された。

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バーバラ(左)、ケネス(右) 「Bugged Space」の記事より

 療養を終えたローレンは最初の里親のもとで再び養子となった。里親の夫妻はローレンに愛情を注ぎ、安定した生活環境を提供した。

14歳の少女への性的虐待の罪で起訴される

「何をしても(クローゼットから)出られなかった。いつも暗かった。私は食べませんでした。食べられませんでした。私は寝ていたクローゼットの中で用を足さねばなりませんでした。床に枕を置き、ときどきブランケットを敷いて眠るまで泣いていました」とローレンは話す。

 幼年期、特に生後3年間に虐待を受けた子供は、取り返しのつかない認知的損傷に直面する可能性があるといわれている。この重要な時期にネグレクトされたり虐待されたりすると、知的発達や機能発達が妨げられ可能性があるのだ。性的虐待の被害者だったローレンは、トラウマを克服するのに苦労したが、彼女は大学で心理学の学位を取得し、他の被害者をサポートすることで自分自身の経験に対処することにしたのだ。

 しかしそうであっても虐待はローレンの人生に大きな影響を与えており、彼女は両親が彼女の悲鳴を隠すために大音量で流していたカントリーミュージックに今でも拒絶反応が起きるという。また30回以上の自殺未遂もあり、トラウマとなった子供時代の日々の記憶のフラッシュバックに悩まされている。

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米トーク番組に出演したときのローレン(画像は「YouTube」より)

 そして残念ながらローレンは25歳の時に、支援活動で出会った14歳の少女への性的虐待の罪で起訴された。少女の両親がローレンの不適切な行為に気づいたのだった。

 警察の尋問でローレンは未成年の少女と性的関係を持っていることを認めた。

 ローレンの刑事弁護人であるグレッグ・ウェストフォールは、ローレンのトラウマ的な生い立ちを理由に、この事件は却下されるべきだと主張した。そして実際に起訴請求は最終的に取り下げられたのだった。起訴取り下げの理由は明らかにされていない。

 この司法判断を批判する声もあるのだが、確かに今もトラウマに苦しめられているローレンには同情を禁じ得ない。安寧に包まれた平穏な日々を送ってくれることを願うばかりだ。

参考:「Bugged Space」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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