たった1つの遺伝子変異で“世界一静か”になった村
たった1つの遺伝子変異で“世界一静か”になった村=インド
“世界一静かな村”がインド・カシミール地方に存在するという。そこでは村民たちが談笑する光景がほとんど見られないというのだ――。
“世界一静かな村”の秘密
雄大なヒマラヤ山脈に囲まれた丘の上にある、人里離れた風景画のように美しい村、ダドカイ(Dadkhai)を訪れるとおそらく最初に気づくのはその静けさであるという。

外で大声をあげながら遊ぶ子供たちもおらず、立ち話で談笑する大人たちもいない。カシミール地方のインド統治側のほかの村でよく聞こえるような賑やかな騒音もない。なぜか? カシミール地方の遠隔コミュニティであるダドカイは、実は世界で最も聾唖症の罹患率が高い地域なのである。
地元住民によれば約300世帯が住むダドカイは「世界一静かな村」として知られ、地球上の他のどのコミュニティよりも、人口内に聾唖者が占める割合が高い。政府の資金援助を受けているインド医学研究評議会(ICMR)による2014年の調査ではダドカイは非症候性聾唖緘黙症(non-syndromic deaf mutism)の有病率が世界で最も高いことが判明し、村人らによると、ここで生まれた子供たちの一定数は話すことも聞くこともできないという。
この辺境の村はほとんどの指標で貧困にあることが示されている。多くの家族は庭で野菜を栽培して食料を補っており、村には舗装された道路はない。診療所はあるものの常駐の医師はいない。飲料水は近くの泉から汲んで運んでおり、村民は主に農業、畜産、日雇い労働で生計を立てている。

外部の者が訪れることはほとんどないため村は平和で、警察の記録によるとこれまでに犯罪はほとんど起こっていない。
村長のチョーダリー・モハマド・ハニエフさんによると、少なくとも83人が聾唖者であるという。政府にこれらの子供たちのための学校を求めたが、今のところその願いは聞き入れられていない。ちなみに聾唖者のほとんどは基礎教育を受けられていないのが現状だ。
世界一聾唖者の多い村として有名になると、カメラを抱えた取材陣や医療関係者を名乗る者が多く村に訪れるようになり、最初は協力をしていた村民たちだったが、最近ではうんざりしているという。研究目的の血液サンプルの提供を拒否する村民も多いということだ。

オトフェリン遺伝子変異が蔓延
何十年もの間、ダドカイの聾唖症の原因は謎であった。
それでも科学者らは遺伝的関連があると強く疑っていて、2014年のICMR調査を主導したインドの神経内科医、スニル・クマール・ライナ氏によると、この村の住民の大部分はインド、パキスタン、アフガニスタンにまたがる遊牧民族コミュニティであるグジャール族で構成されているという。村の住民の遺伝子検査により、タンパク質の欠乏を引き起こし、難聴を引き起こす可能性がある突然変異であるオトフェリン遺伝子変異が広く蔓延していることが明らかになった。そしてこのオトフェリン遺伝子変異は遺伝するのである。
そのため専門家は、村内で数十年にわたって近親婚が繰り返されてきたことが、遺伝的突然変異が世代から世代へと急速に広がった原因であると考えている。政府のデータによると、少なくとも83人(そのほとんどが女性)が欠陥遺伝子の影響を受けており、村の55世帯がその影響下にある。隔絶された村の閉鎖性が招いた悲劇であったことになる。

また別の説では、ある時期にオトフェリン遺伝子変異を持った人々がこの村に多く移住してきた可能性もあるという。原因となる遺伝子の系統が複数確認されているからだ。
そして聾唖者は行動範囲が狭く村に留まる傾向が高くなることもまた皮肉にも「世界一静かな村」を確かなものにしてしまっているのだ。
したがって村の未来を変えるためにまず何よりも先に必要なのは、聾唖の子供たちが基礎教育を受けられる特別学校の開設である。読み書きを覚え、手話をマスターできれば自立した生活が送れるようになり、村の外にも出やすくなるだろう。いずれにしてもこの「世界一静かな村」への物心両面の支援が必要であることは間違いない。
参考:「The Daily Beast」ほか
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