「我々がシミュレーション世界にいる可能性は50%」物理学者が計算! 世界のエラーに気付く方法も

 周囲の出来事から遊離し、現実感を喪失する離人症というものがあるが、そもそもわれわれが現実だと思っているこの世界がシミュレーションに過ぎないとする説もある。実際にこの世界が仮想現実であることは証明されていないが、その可能性は50%だという試算も出ている。以下、2020年の記事を再掲する。

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※ こちらの記事は2020年10月19日の記事を再掲しています。

「我々がシミュレーション世界にいる可能性は50%」物理学者が計算! 世界のエラーに気付く方法もの画像1
画像は「Scientific American」より

 われわれが映画『マトリックス』のようなシミュレーション世界に住んでいる可能性は五分五分だということが物理学者の確率計算で分かった。米科学誌「Scientific American」(10月13日付)が報じている。

 シミュレーション仮説を語る上で外せないのが、米オックスフォード大学の哲学者ニック・ボストロム氏の発案したトリレンマである。次の3つの命題のうち1つが真実だとボストロム氏は主張する。

1、(自分たちの先祖に関する非常に忠実なシミュレーションができる能力を持つ)人類よりも進んだ文明が存在する確率は0に限りなく近い。

2、進化の歴史などをシミュレートすることに興味がある人類よりも進んだ文明が存在する確率は0に限りなく近い。

3、全ての人がシミュレーションの中で生活している可能性は1に限りなく近い。

 実業家のイーロン・マスク氏は、2016年に「われわれがベースとなる現実にいる確率は数十億分の1だ」と発言し物議を醸したが、コロンビア大学の天文学者デビッド・キッピング氏によると、トリレンマの1と2が否定されれば、マスク氏は正しいという。

 一方、キッピング氏がベイズ確率を用いて計算したところ、われわれがベースとなる現実にいる事後確率とシミュレーション世界にいる事後確率はほぼ同じ、むしろベースとなる現実にいる確率がわずかに高いという結果になったという。ただし、シミュレーションの中に意識ある人間がいるとすると、この確率は劇的に変化するとのことだ。

「計算によると、そのような技術が開発されたら、ほぼ間違いなく、われわれは現実ではないということになります」(キッピング氏)

 キッピング氏の主張にはボストロム氏も賛同している。というのも、ボストロム氏の主張は「AまたはBまたはCのどれか1つが真である」というものに過ぎないからだ。

 ところで、仮にこの世界がシミュレーションだとして、そのことにわれわれは気付くことができるのだろうか? 米カリフォルニア工科大学の計算数学の専門家であるHouman Owhadi氏は、「シミュレーションが無限の計算能力を持っているとしたら、バーチャルリアリティの中に住んでいることに気づくはずがありません」と指摘する。無限の計算能力があれば、どんなエラーも起こり得ず、世界がシミュレーションである痕跡がどこにも残らないからだ。

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画像は「getty images」より

 だが、計算能力が有限だとしたらどうだろうか? メリーランド大学の物理学者Zohreh Davoudi氏は、有限の計算資源でシミュレーションを行うと、そうした痕跡が残る可能性があると指摘している。有限の計算能力の下では、時空を連続的ではなく離散的にシミュレートする必要があるとDavoudi氏は言う。そうした離散的な時空では、高エネルギー宇宙線が届く方向に痕跡が現れるそうだ。回転対称性が破れにより、宇宙線は空間の中で優先的に動く方向を持つというのである。現時点では回転対称性の破れは観測されておらず、痕跡は見つかっていないが、Davoudi氏によると、たとえそのようなものが観測されたとしても、直ちにわれわれの世界がシミュレーションだと結論することはできないと念を押している。

 さらに、ベイズ確率からシミュレーション仮説を検証したキッピング氏は、「オッカムの剃刀」の観点から、シミュレーション仮説は支持できないとしている。

「シミュレーション仮説は過度に複雑に入り組んだモデルです。シンプルで自然な説明に比べて、オッカムの剃刀から真に疎んじられるべきものでしょう」(キッピング氏)

 シミュレーション仮説の是非は今後も長く議論されていくことと思われるが、哲学者と物理学者の“温度差”は今後縮まることはあるのだろうか? 哲学者であるボストロム氏は、論理的に可能であるかどうかという形式に焦点を当てているのに対し、物理学者は現実的に可能であるかどうかという事実に焦点を当てている。事実の点からボストロム氏に何を言おうとも、言葉は空転するばかりである。今後、シミュレーション仮説がより実り豊かな議論に熟成していくことを心から願いたい。

参考:「Scientific American」ほか

文=S・マスカラス(TOCANA編集部)

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