「レイライン」は本当に存在するのか……ストーンヘンジ、ピラミッド、マチュピチュは直線上に配置されている?

 地球の“経絡”にもたとえられている「レイライン」は本当に存在するのか――。もし存在するとすればそれはどんな働きをしているのだろうか。

■要衝は直線上に配置されている?

 古代の遺跡、たとえばストーンヘンジ、ギザのピラミッド、マチュピチュは、レイライン(Ley Lines)と呼ばれる直線上に配置されているという仮説がある。レイラインが存在するという仮説にはどんな根拠があるというのか。

 一部の支持者はレイラインが古代の交易路として機能したのではないかと主張する一方、エイリアンが何らかの形で関与していると考える人々もいる。科学的な観点からはなんとも扱い難い案件であるようだ。

「IFL Science」の記事より

 レイラインの概念は、1925年にイギリスの古書学者、アルフレッド・ ワトキンスによって初めて提案された。この概念を説明した著書『The Old Straight Track』では、ワトキンスがある日ヘレフォードシャーを旅行中に丘の頂上をつなぐ小道同士が一直線につながっているように見えることに気付きこのアイデアを思いついたことが言及されている。

 ワトキンスは古墳、石の十字架、教会、聖なる井戸、巨石などのランドマーク間の位置関係にスポットライトを当てることで自分の主張を証明し、これらの建造物は石器時代の交易商人が正確に旅ができるように、集落間の直通ルートとして直線的な通路に沿って意図的に建設されたのではないかと示唆した。

ワトキンスの図説 画像は「Wikipedia」より

 しかし考古学界はこの仮説に多くの瑕疵があることにすぐに気づいた。たとえばワトキンスはこれらの直線を説明するために地図を使用したのだが、3次元の現実世界ではこれらのランドマークの多くが高い丘、密林、川によって隔てられていて、直線をたどることが不可能であるケースのほうがむしろ多いことなどである。

 さらに重要なことは、イギリス地理にはこれらのランドマークがきわめて密集してあるため、いくつかのランドマークが直線上に並んだとしてもたいして不思議ではないことだ。

 こうしてワトキンスのレイラインのアイデアは科学界に却下されたのだが、意外なことに1960年代になって“復活”した。

 1961年、元軍のパイロットで発明家のトニー・ウェッドは、レイラインは異星人の宇宙船に滑走路を提供するために先史時代に敷設されたものであると示唆した。この理論の信者は、UFOの目撃情報はこれらのレイラインの真上で最も多いのだと断言しているが、残念ながらその証拠は誰からも提示されていない。

 1969年のジョン・ミシェルの著書『The View Over Atlantis』では“地球エネルギー”の概念が紹介され、古代の遺跡では瞑想やダウジングを通じて、このエネルギーを感知することができるというスピリチュアルな考えが提唱されている。つまりスピリチュアリズム、あるいはニューエイジ思想にレイラインが取り入られることになったのだ。ここからダウジングのブームがはじまったといわれ、当時は各地の古代遺跡にダウジングロッドを持って徘徊する者が少なくなかったという。

 ダウジング専門雑誌『Ley Hunter』の編集者らは1977年に「ドラゴン・プロジェクト」を立ち上げ、各地の古代遺跡で 地球エネルギーを調査する活動を行い、さらに古代遺跡で眠るとどのような夢を見るのかといった実験を行って注目を集めたが、地球エネルギーとレイラインの存在を示唆するものは特に得られなかったようだ。

■「基本的にレイラインは“ファンタジー”」

 レイライン支持者の中には、先史時代の遺跡が互いに位置を合わせて建設されたと主張し続けている者もいる。

 たとえばコーンウォールの象徴である「聖ミカエルの山(St. Michael’s Mount)」を端緒に、大天使ミカエルに捧げられた多数の記念碑を結ぶ全長約563キロメートルの直線のレイラインは「聖ミカエルライン」と呼ばれている。

聖ミカエルライン 画像は「YouTube」より

 数学者たちはこの主張に反論するために、地図上に線を引くと、つながっていないサイトが簡単にリンクしているように見えることを繰り返し実証してきた。ロンドンのクイーンメアリー大学のマット・パーカー氏は、イギリス全土のウールワース(スーパーマーケット)店舗の場所を結ぶレイラインをどのように特定できるかを明らかにしている。

 パーカー氏の研究が示すように、レイラインの問題はイギリスには古代遺跡が非常に多く、教会、井戸、巨石などが容易に一本の直線上に配置できることである。

 その意味でレイラインは「ラムゼー理論(Ramsey Theory)」として知られる数学的概念を完璧に示したものであり、選択できる十分なランダムなデータがある限り任意のパターンを見つけることができるという。

 イギリスにレイラインの作成を可能にする十分な遺跡がある場合、世界中の何十万もの古代遺跡を含めると、作業はさらに簡単になる。

画像は「Pixabay」より

 だが一種の“都市計画”として施設や建造物が意図的に配置されたケースもないわけではない。

 たとえばインカ帝国は、首都クスコから放射状に広がり、王国の外縁に向かって延びるセケ(ceques)として知られる一連の儀式用通路によって区画されていた。これらの直線に沿って、ヒスパニック以前の文化ではワッカとして知られる儀式用の標識が設置されていたのだが、その目的は何だったのか、また各セケの軌道をどのように決定したのかは正確にはまだ不明である。

 一方、中国では「風水」の伝統文化があり、気と呼ばれる普遍的なエネルギーを調和させるために「気の流れを物の位置で制御する」という技法が発展した。気は地球のエネルギーと完全に同じではないものの、風水とレイラインの考え方との間には明らかな類似点がいくつもある。

 オープン大学の考古学者ロバート・ウォリス博士は「基本的にレイラインは“ファンタジー”だと思う」と言及しているが、そう言い切ってしまうのが残念に思えるほどには魅力的なアイデアのような気もするがいかがだろうか。

参考:「IFL Science」ほか

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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