伝説の大陸『アトランティス』に関する3つの誤解とは

Athanasius Kircher, Public domain, via Wikimedia Commons

 海の底に沈んだとされる伝説の大陸「アトランティス」。現在ではアトランティス大陸は実在せず、プラトンが自らの哲学的な主張を展開するために創作した架空の国家である可能性が高いと考えられいるが、かつてアトランティスを探求することは、実際に考古学的な試みであった。

 1915年のスミソニアン協会の理事会への年次報告書には、フランスの研究者ピエール・テルミエによる、アトランティスの探索状況に関する詳細な議論が含まれてる。テルミエはオカルト主義者ではなく、フランス地質図の作成に携わるフランス科学院のメンバーであったのだ。

アトランティス探求の変遷とその背景

 ではなぜ、110年が経った今、オックスフォード辞典などの権威ある辞書において、アトランティスの探索が「疑似考古学」として扱われるようになったのか。それは、最初から結論ありきの誤謬の極端な例といえるだろう。さらに、考古学界の一部は、アトランティスのような失われた高度な文明について考察すること自体を否定する組織的な動きをしているのだ。

 こうした過剰な反応や言論封殺は、長期間にわたる誤りが露見することを恐れる人々の知的な限界を示している。しかし、それだけではないだろう。2023年4月に出版された『ヤージュニャヴァルキヤの黙示録(The Apocalypse of Yajnavalkya: Revelations Concerning the Nature of Humanity and the Gods )』では、この問題に大胆に切り込み、一連の驚くべき発見を明らかにしている。

 実際、我々はアトランティスについて長い間、誤った情報を信じ込まされてきたのかもしれない。以下に挙げるのは、現在多くの人々が当然のこととして受け入れている、アトランティスに関する3つの一般的な誤解である。

1.アトランティスはジブラルタル海峡の前にある島であった

 この主張は長い間繰り返されてきたが、プラトンがアトランティスの領土について語った内容と本当に一致しているかは疑問が残る。プラトンの『ティマイオス』や『クリティアス』の一部だけを読むと、そのような解釈が可能かもしれないが、文脈全体を考慮すると別の見方ができる。プラトンが描いた「海峡の前にある島」は、実際にはマデイラ島である可能性が高く、プラトンの描写する広大な領域はマカロネシア全体や、アフリカ北部から南ヨーロッパにかけての地域に該当するかもしれない。

 それにもかかわらず、なぜ大西洋に巨大な伝説上の島があるという神話が広まったのだろうか。その理由の一つとして、モーリタニアにある「リシャット構造」が挙げられる。この地形は、プラトンが描写したアトランティスの領土内にあり、首都の形状と一致する特徴を持っている。さらに、リシャット構造は何十万年にもわたって人類に住まれ、かつて海による大規模な破壊を経験した痕跡が見られる。このため、プラトンのアトランティスに関連付けられているのであろう。

人工衛星から捉えたリシャット構造 画像は「Wikipedia」より

2:アトランティスの話はプラトンが唯一の出典である

 おそらく、さらに驚くべき事実は、プラトンがアトランティスに言及した唯一の古代著者ではないということである。紀元前1世紀、ディオドロス・シクルスは全20巻からなる『歴史図書館』を出版し、その第3巻には、アレクサンドリアの学者ディオニュシウス・スキトブラキオンによるアトランティスに関する詳細な記述が含まれている。

 ディオニュシウスの正体は謎であり、古代文献に他の記述はないが、一部の研究者は彼をミレトスのディオニュシウスと同一視している。しかし、ディオドロスが両者を混同した可能性は低い。第3巻では、プラトンが語らなかったアトランティスの創始家族、内紛、宗教的儀式などが詳述されている。

 ディオドロスのこの記述は千年以上にわたり伝えられており、1927年にルイス・スペンスが『アトランティスの歴史』で紹介した。さらに、2008年の『ティマイオスとクリティアス』の翻訳者がディオドロスの大部分も翻訳しているが、彼がアトランティスに関する記述を見逃したとは考えにくい。

 ディオドロスによれば、アトランティス人はリビアの西端、ギリシャ人がアトラス山と呼ぶ山の近くに住んでいた。現在のモロッコ南部には「トゥブカル」と呼ばれる山があり、その近くで最古の人類の遺骨が発見されている。この山とリシャット構造、およびその周辺地域は、人類が最初に知った土地であった可能性がある。

3:北アフリカの古代河川システムは最近発見されたものである

 2015年、研究者たちはモーリタニアの砂の下に古代の河川ネットワークを発見したと発表し、この地域にあるリシャット構造がアトランティス人に海へのアクセスを提供していたと考えられている。この巨大な河川は「タマンラセット川」と名付けられ、アトランティスが海上大国となるための重要な役割を果たしていたとされる。

 しかし、このような大規模な河川システムはプトレマイオスの時代からアフリカの地図に描かれており、その主な河川は、聖書の「ピソン川」と一致する可能性が高い。過去数世紀の間にこの川は地図に描かれなくなったが、それは川が干上がったり地形が変わったりして、航海者たちがその川を確認できなくなったためかもしれない。この事実は、アトランティスとエデンの間に関連性を見出そうとする主張に新たな示唆を与えるものとなっている。

イメージ画像 Created with DALL·E

 以上の内容はすべて、『ヤージュニャヴァルキヤの黙示録』で詳細に探求されている。この書籍では、高度な氷河期文明が存在しなければ人類の歴史は説明がつかないという視点から考察されている。著者は、我々の古代の祖先がこれらの高度な人々と接触したことが、今日の多くの宗教や政治構造の基礎を築いたと主張している。また、アトランティス人として知られる人々は、単に失われたのではなく、長い時間をかけて人類の歴史から体系的に抹消されてきたのではないかと考えている。

 かつてアトランティスは実在し、海の底に沈んだのか、それとも長い時間をかけて人類の歴史から体系的に抹消されてきたのかどうかは、未だに確証が得られていない。しかし、その謎とロマンに満ちた物語は、今なお多くの人々を惹きつけ続けている。

参考:How and Why’s、ほか

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TOCANA編集部

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