古代エジプト遺跡に描かれた『デンデラの電球』とは? 失われた先進文明、あるいは…

 エジプト中部の町、デンデラのハトホル神殿にある石造りのレリーフに描かれた「デンデラの電球」は失われた古代先進技術の痕跡なのだろうか――。

■「デンデラの電球」は存在したのか

 エジプトのデンデラにある古代遺跡、デンデラ神殿複合体の主神殿であるハトホル神殿は、4500年以上前にさかのぼる第4王朝の古代都市で、古代エジプトの礼拝堂に収容されるすべてのものを内包している。

 ファラオを奉る儀式用の部屋、遺体安置室、華やかで長い廊下、多くの彫像、フレスコ画、彫刻で画が描かれたレリーフなどが無傷で保存されているのだ。

 レリーフの1つは2人の人物と共に大きな細長い電球のような物体が描かれており、電球の内側には、ヘビの形のフィラメントが伸びており、3つのリングを備えた台座で支えられている。一部の専門家はこれを古代エジプト人が高度な電気技術を持っていた証左であると指摘し「デンデラの電球」と名づけた。

古代エジプト遺跡に描かれた『デンデラの電球』とは? 失われた先進文明、あるいは…の画像1
「Anomalien.com」の記事より

 はたして古代エジプト人は電気技術を有していて、神聖な儀式の際にそれを駆使していたのだろうか。

 しかしこの「デンデラの電球」にどのように電力を供給していたのか、そしてどうやって発電していたのかについての明確な説明は今のところはない。さらに電球にはガラスが欠かせないが、残念ながら古代エジプトでガラス工芸が高度に発達したという証拠はない。

 さらにチューブとジェネレータ間の接続ケーブルも必要であり、偶発的な感電を防ぐために導電性素材のワイヤーは絶縁材で包まれている必要がある。

 したがって、絶縁材料の製造と加工のための技術に加えて、金属の抽出と加工のための技術も必要とされている。こうしたさまざまな材料の導電性と絶縁性に関する知識がなければならないのだ。

 こうした当時の技術的背景を鑑みて、オルタナティブメディア「Anomalien.com」の記事では、「デンデラの電球」が存在した可能性に疑問を呈しているようだ。

古代エジプト遺跡に描かれた『デンデラの電球』とは? 失われた先進文明、あるいは…の画像2
「Anomalien.com」の記事より

■地球外文明がもたらした先進技術なのか?

「デンデラの電球」が古代エジプトの失われた先進文明の産物であった可能性が取り沙汰されているのだが、新たな技術的な発明や発見は、どれほど革新的であったとしても決して孤立した単独の出来事ではない。その発明や発見に到る諸条件が満たされている状況が最初にあるのだ。とすれは「デンデラの電球」が古代エジプトで発明され、その後に継承されずに失われてしまったというのはやや不自然でもあるのだろう。

 あるいはその先進文明は地球にやってきた地球外の文明がもたらした可能性も残されており、やや突飛ではあるもののそう考えてみれば失われた技術になったとしても説明はしやすい。そもそも我々人間自体が“神”という名の地球外先進文明が創造したものであるとする解釈は「古代宇宙飛行士説」と呼ばれ一部で根強く支持されている。

古代エジプト遺跡に描かれた『デンデラの電球』とは? 失われた先進文明、あるいは…の画像3
「Anomalien.com」の記事より

 ではこの「デンデラの電球」は地球外先進文明から授けられた技術が生み出したものなのだろうか。レリーフに描かれた「デンデラの電球」だけでなく、“現物”の一部でも見つかれば話は大きく前進するのだろうが、今のところは見つかってはいないようである。

 古代の象形文字や人物像、壁画や絵画、彫刻を読んだり解釈することはきわめて難しいが不可能なことではない。

 ではこの「デンデラの電球」の彫刻画をどう解釈できるのだろうか。ある専門家によれば、このレリーフに描かれているのは太陽の神に敬意を表するために毎年繰り返し行われている宗教的な儀式であるという。

 記されている古代エジプトの数字はアトール神とそれに関連するほかの神々が季節のサイクルで定期的に戻ってくることを象徴的に表しており、この「デンデラの電球」はエジプト神話に基づけば、その内部にヘビを産んだハスの花であるという。

 ナイル川のほとりに暮らしていた古代の人々と我々現代人を隔てる時間的な距離は、彼らの宗教的慣習と儀式、世界観の記憶をほぼ完全に消失させたが、当時に戻ってその実態を真剣かつ詳細に研究する試みは不可能ではない。

“失われた先進文明説”は一見魅力的ではあるが、その周辺になぜ継承されなかったのかを考慮すると確かに不自然ではある。とすれば「古代宇宙飛行士説」のほうが有力な説明ということになるのだろうか。「デンデラの電球」の理解に進展がみられることを期待したい。

参考:「Anomalien.com」、ほか

 

※当記事は2022年の記事を再編集して掲載しています。

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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