「金正恩は太っていますか?」←北朝鮮IT工作員を見抜く魔法の質問

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イメージ画像 Created with AI image generation (OpenAI)

 リモートワークが普及する現代、世界中の企業に巧妙に潜り込む北朝鮮のIT工作員たち。彼らは偽りの経歴と高度な技術を駆使して職を得て、その報酬を本国のミサイル開発資金に流しているという。そんな彼らを見破る、驚くほどシンプルで、しかし効果的な「踏み絵」があるらしい。それは、採用面接でこう尋ねることだ。「金正恩(総書記)は太っていますか?」

なぜこの質問が有効なのか? 踏み絵となる最高指導者への評価

 一見、不謹慎にも聞こえるこの質問が、なぜ有効なのだろうか。それは、北朝鮮の体制下では、最高指導者である金正恩氏を批判することが、たとえ海外にいるIT工作員であっても、発覚すれば厳しい処罰に繋がりかねない重大なタブーだからだ。否定的な意見を求めるこの質問は、彼らにとって非常に答えにくい、まさに地雷なのだ。

 サイバーセキュリティ企業CrowdStrikeの幹部によると、この質問だけで北朝鮮の工作員と疑われる複数の人物が即座に面接を打ち切ったケースがあるという。暗号資産関連企業g8keepのCEO、ハリソン・レッジオ氏も、全ての面接の最後にこの質問を実践。初めて試した際は相手がパニックになり、その後レッジオ氏をSNSでブロックしたという。彼は自身に送られてくる履歴書の実に95%が、アメリカ在住者を装った北朝鮮の人物によるものだと推測している。

単なる経歴詐称ではない、国家ぐるみの資金調達スキーム

 これは個人の職探しの話ではない。偽の履歴書や身元詐称は、北朝鮮という国家が組織的に行っている大規模なサイバー攻撃と資金調達活動の一部なのだ。アメリカ政府機関は、この北朝鮮IT工作員による詐欺行為が、2018年以降、年間数億ドルもの収益を上げていると推計している。その資金は金正恩政権の兵器開発プログラム、サイバー攻撃から弾道ミサイル開発まで、あらゆる軍事活動の資金源となっている。

 CrowdStrike社が「Famous Chollima」として追跡するこのグループの活動は拡大しており、AI技術の進化が彼らの戦略をさらに強化していると専門家は警告する。

AI、偽装拠点… 巧妙化する手口

 彼らの手口は巧妙だ。生成AIで説得力のあるLinkedInプロフィールを作成し、技術面接ではチームで対応、さらにアメリカ国内にある「ラップトップ・ファーム」(物理的な拠点を偽装するための協力者の拠点)を利用して国内勤務を装う。一度採用されると、しばしば優秀な働きぶりを見せるという。画面の向こうにはチーム全体がいることが多いからだ。

 採用が決まった後、「家族の緊急事態」などを口実に、会社支給のラップトップ(ノートPC)を別の住所(ラップトップ・ファーム)に送るよう要求するケースもある。そして企業内に潜入すると、ログイン情報を収集し、マルウェアを仕掛け、最終的には企業から金銭を脅し取ろうと試みる、とFBIは警告している。

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被害は世界へ拡大、対策は追いつくか?

 この北朝鮮のIT工作員による詐欺スキームは、もはやアメリカだけの問題ではない。Googleの研究者によると、彼らは現在、イギリスやヨーロッパの企業、特に防衛関連企業やAI開発企業もターゲットにしている。現地の協力者がラップトップの管理から暗号資産での支払い仲介まで、偽装工作全体を支援しているケースもある。時にはロシアに拠点を置き、マネーロンダリングを行うこともあるという。

 最も基本的な対策は、身元確認の徹底だ。リアルタイムのビデオ面接、IPアドレスの位置情報確認、身分証明書と本人の顔写真の照合などが挙げられる。そして、もしかしたら、あの「金正恩は太っていますか?」という質問も有効な手段なのかもしれない。

 しかし、IT工作員の手口も日々巧妙化しており、これらの対策がいつまで通用するかは未知数だ。国家ぐるみで仕掛けられるサイバー攻撃と資金調達に対し、国際社会は有効な対策を打ち出せるのか、警戒が必要な状況が続いている。

参考:ZME Science、ほか

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