『ロックダウンは間違いだった』著名疫学者が鳴らす“次のパンデミック”への警鐘

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 次に世界を襲うパンデミックはどのような脅威を伴っているのか。そして我々はそれにどう備えればよいのか――。ミネソタ大学の著名な疫学者が次に世界を席巻する感染症の流行時に、被害を軽減し、人命を救うために取るべき行動を示唆している。

■著名疫学者「ロックダウンは効果がない」

 米ミネソタ大学公衆衛生学部の指導教授であり、バイデン政権の新型コロナウイルス感染症諮問委員であった マイケル・トーマス・オスターホルム氏と、作家マーク・オルシェイカー氏による新著『The Big One: How We Must Prepare for Future Deadly Pandemics(ビッグワン:未来の致命的なパンデミックにどう備えるべきか)』が先日出版された。

 本書は過去のパンデミックから得られた教訓を整理し、歴史の教訓と先見の明のあるリーダーたちの知恵に基づき、健康を守り、家庭を安定させ、不確実な状況に適応する能力を強化するための明確な道筋を示していると紹介されている。

 オスターホルム氏によれば今年のアメリカの政権交代により、バイデン政権の新型コロナウイルス感染症諮問委員会は、残念ながら完全に解散してしまい、パンデミックに対応する政府の能力はほぼ白紙に戻ってしまったのだという。とすれば人類は次のパンデミックにどう備えればよいというのだろうか。

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 先日、科学メディア「Live Science」がオスターホルム氏に、次のパンデミックに何を予期すべきか、どのように備えるべきかについて話を聞いているので簡潔に紹介してみたい。

 オスターホルム氏らの新刊ではパンデミックが蔓延する中で重要な情報をいかに効果的に伝えるかについて多くの時間を割いていることから、パンデミック中のコミュニケーションにとって何が重要なのかという質問が投げかけられた。

 今回のコロナ禍の初期、ロックダウンが始まる前に、オスターホルム氏は「ワシントン・ポスト」紙に論説記事を寄稿し、ロックダウンは行わないよう強く訴えていた。

「(ロックダウンは)効果がない。やるべきではない。ロックダウンはいつ解除されるのか? 何カ月も何年も続くでしょう」(オスターホルム氏)

 オスターホルム氏によれば重症者や死亡者数を最小限に抑えるために最も重要なことは医療システムを機能させ、医療を提供できるようにすることだが、コロナ禍では感染者数が急増したためそれがスムーズに実行できなくなった。しかしもし、各地域の病院収容能力に関するデータを地方行政がきちんと把握し、毎日その数値を公開していたらどうだったのか。

「大雪の日と同じように、今後1週間、人との接触を控えていただければ、ベッド数を減らすことができます」とオスターホルム氏は説明し、この状況の中で人々は長期戦を覚悟しなければならなかったと振り返る。

 パンデミックは簡単に過ぎ去るものではなく「これは3、4年続くかもしれない戦いになるだろう」ということを予め周知させておくことが重要であるとオスターホルム氏は指摘する。

「この業界で50年間働いてきて気づいたことの一つは、人々は真実を求めているということです。物事を甘く包み隠すのはやめましょう。同時に誇張もせず、なぜそうなのか理由を説明しましょう」(オスターホルム氏)

 今回のコロナ禍の渦中では我々はさまざまな情報に踊らされることになったが、ではパンデミック中の情報の取捨選択をどうすればよいのか?

「誰も統一された意見を持つことを主張していないと思います。なぜなら、解決策を追求する際には意見の相違が生じ、それは時間とともに変化するからです」とオスターホルム氏は説明する。そしてもっと謙虚にならなければならないという。

「私はいつも謙虚さという言葉にこだわっています。つまり、私たちが何を知っていて、何を知らないのか、そしてそれがどのように変化する可能性があるのかを明言することです。もしそうしていれば、国民の信頼という点で、はるかに良い状態になっていただろうと思います。わからない時は、わからないと言うべきです」(オスターホルム氏)

 コロナ禍の最中ではさまざまな“専門家”からの見解がメディアに溢れることになったが、一部の“専門家”にはいくばくかの慎み深さが求められていたのかもしれない。

 では医療の専門家では普通の人々にとって、パンデミックに際していったい何ができるのだろうか。

 この問いにオスターホルム氏は、たとえば同氏が運営するウェブサイトでは、ワクチンの入手や教育支援など、地域社会で活動している団体のリストを掲載しており、これらの団体と連携することを推奨している。

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 この度のパンデミックの間に活用できなかったことの一つは、“市民公衆衛生部隊”を活用することであったという。情報によってパンデミックを止めることはできないが、その恐ろしい影響を最小限に抑えることはできるはずであるという。

 一般の人々はワクチンを作ることはできないが、選出された議員に働きかけることはできる。たとえば彼らには学校委員会、市議会、州議会で(有害な)政策が作られないようウォッチすると共に“防波堤”になることもできるのだ。

「市民がこれを追跡し、連絡を取り合い、証言できるようになることは本当に重要だと思います。私たちは、市民監視団体が人々に警告を発するために、もっともっと努力しなければなりません」(オスターホルム氏)

 今回のコロナ禍がもたらした教訓はオスターホルム氏に倣えば「横の連携」の重要性だろうか。

 世界保健機関(WHO)によると、 COVID-19は現在までに世界中で700万人以上が命を落としている。次に迫り来るパンデミックに際して我々は「横の連携」を図りながら覚悟を持って対策に取り組んでいかなければならないのだろう。

参考:「Live Science」ほか

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
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