なぜか“ほとんど夢に見ない”5つのこと ― 毎日使うスマホ、自分の顔…科学が解き明かす、夢の世界の“除外リスト”

空を飛んだり、ズボンを履かずに試験を受けたり…。私たちの夢は、時に想像を絶するほど奇想天外な世界を描き出す。しかし、どれほどワイルドな夢であっても、そこにはほとんど現れない“お決まりのアイテム”があることを、あなたはご存知だろうか。
現代人が1日に3時間以上も費やす「スマートフォン」。しかし、驚くべきことに、私たちはほとんど夢の中でスマホを手にすることはない。夢の研究者によれば、私たちの眠れる脳は、スマホ以外にも、いくつかのありふれた日常の要素を再現できない、あるいはしようとしないという。
夢の世界から“追放”された5つの要素
科学者たちが指摘する、「夢に出てこない」とされる5つの要素。それは、私たちの日常生活に深く根ざしているにもかかわらず、なぜか夢の世界では“部外者”扱いだ。
1. スマートフォン
2. 文字を読むこと
3. 数字を認識すること
4. 味と匂い
5. (正確な)自分の顔
夢の研究者、ケリー・バルクリー博士は、「夢の中の私たちの心は、より流動的で、感情的、連想的に働きます。その反面、読書や計算、コンピューターの操作に必要な、短期的な集中力は低下する傾向にあります」と語る。

なぜ「スマホ」は夢に出てこないのか?―“脅威シミュレーション仮説”
1万6000件もの夢の報告を分析した研究によれば、夢の中にスマホが登場する割合は、女性でわずか3.55%、男性では2.69%に過ぎない。自動車が約9%の夢に登場することを考えると、その使用頻度とは裏腹に、驚くほど低い数値だ。
なぜか。ハーバード大学の心理学者、ディアドラ・バレット博士は、「脅威シミュレーション仮説」を用いてその理由を説明する。この仮説によれば、夢とは、私たちが現実世界で直面するかもしれない危険に対処するための、進化の過程で獲得した防衛メカニズムだという。
「人類がサバンナで狩猟採集生活を送っていた、95%以上の進化の歴史において重要だった要素が、現代人の夢の中でも過剰に表現される傾向にあります」とバレット博士は語る。
つまり、嵐や野生動物から逃げる夢、ヘビに遭遇する夢を頻繁に見るのは、それらが私たちの祖先の生存に直結する脅威だったからだという。一方で、スマートフォンは、私たちの進化の歴史から見れば、ほんの一瞬しか存在していない。そのため、生存本能を司る夢の世界では、「重要ではない」と判断され、ほとんど登場しないのだ。

脳の“省エネモード”―文字や数字が読めない理由
夢の中で本を読もうとしても、文字が意味不明な記号に見えたり、目を離した隙に内容が変わっていたりした経験はないだろうか。同様に、時計の数字や数式も、夢の中では歪んで見えることが多い。
これは、夢を見ている間、私たちの脳が“省エネモード”に入っているからだ。
「ほとんどの夢が発生するレム睡眠中、言語に関連する脳の領域は活動が低下します。特に、文字の読み書きに特化した部分は、さらに活動が低下するのです」とバレット博士は説明する。
認知神経科学者のベンジャミン・ベアード博士も、「夢の中では、脳は外部からの情報なしに、トップダウンで情景を生成します。そのため、文字や数字、デバイスのインターフェースといった細かなディテールは、不安定になったり、見直すと変化したりするのです」と付け加える。

味や匂い、そして“自分の顔”―夢が描けないもの
美味しい食事の夢を見ても、その「味」や「匂い」を本当に体験したことはあるだろうか。ある研究によれば、夢の中で味覚や嗅覚を報告する人は、わずか1%に過ぎないという。これは、味覚や嗅覚を司る脳の回路が、視覚や聴覚のネットワークとあまり重なっていないため、夢に反映されにくいからだと考えられている。
そして、最も奇妙なのが「自分の顔」だ。夢の中で鏡を見ることができない、というのは俗説だ。しかし、鏡を見たとしても、そこに正確な自分の姿が映ることは、ほとんどないという。
「多くの人は、自分の顔が奇妙に歪んでいたり、全くの別人になっていたりするのを見ます。そして驚くべきことに、夢の中ではそのことに何の疑問も抱かないのです」とバレット博士は語る。
これもまた、脳が外部情報なしに、複雑な自分の顔のすべての特徴を正確に再現するのが、あまりにも困難だからだと考えられている。
私たちの夢は、進化の記憶と、脳の不思議な働きが織りなす、壮大で、そして少し不完全な物語なのかもしれない。
参考:Daily Mail Online、ほか
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2024.10.02 20:00心霊なぜか“ほとんど夢に見ない”5つのこと ― 毎日使うスマホ、自分の顔…科学が解き明かす、夢の世界の“除外リスト”のページです。夢、スマートフォン、脳などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで
