伝説のUFOアブダクション「トラヴィス・ウォルトン事件」から50年、“失われた5日間”の謎

1975年11月5日、アリゾナ州の森林で起きた出来事は、世界でもっとも有名なエイリアン・アブダクション(誘拐)事件として知られている。「トラヴィス・ウォルトン事件」と呼ばれるこの一件は、映画『ファイヤー・イン・ザ・スカイ/未知からの生還』のモデルにもなった。
あれから50年。当時22歳だったトラヴィス・ウォルトンは72歳となり、事件は地元の小さな町ヒーバーとオーヴァーガードを「エイリアン観光」のホットスポットへと変貌させた。しかし、当事者である彼にとって、それは今も消えない後悔と共にある記憶だ。

「UFOに向かって走り出した愚かさ、それが私の人生を大きく狂わせた。正直に言えば、あんなことは起きなければよかった」とウォルトンは語る。
あの日、森で何が起きたのか
事件当日、ウォルトンを含む7人の木こりチームは、ターキー・スプリングス近郊での伐採作業を終え、トラックで町への帰路についていた。日が暮れかけた森の中、ハンドルを握っていたリーダーのマイク・ロジャースが、木々の隙間に奇妙な光を見つけたのが始まりだった。
カーブを曲がると、開けた場所にその物体はいた。地上から約15〜20フィート(約4.5〜6メートル)の高さにホバリングする、巨大な楕円形のUFOだった。立体的で、明暗のある複雑な構造をしていたという。
ウォルトンは衝動に突き動かされるようにトラックを飛び出し、仲間たちの制止を振り切って物体へと早足で近づいていった。彼が真下近くまで行ったその瞬間、物体から激しい振動音と金切り声のような音が響き渡る。次の瞬間、ウォルトンは強烈な「エネルギーの稲妻」のようなビームに直撃された。

「それは真っ直ぐなビームで、彼の頭と胸を直撃しました。彼は10〜15フィート(約3〜4.5メートル)も吹き飛ばされ、仰向けに叩きつけられました」とロジャースは振り返る。あまりの恐怖にパニックに陥ったロジャースはアクセルを踏み込み、仲間たちはウォルトンを置き去りにして現場から逃走した。
しばらくして冷静さを取り戻した彼らは、後悔に苛まれながら現場へと戻る。しかし、そこにはもうUFOの姿も、ウォルトンの姿もなかった。森の中を必死に探し回ったが、痕跡一つ見つからなかったのだ。
そして5日後、ウォルトンは突如として姿を現す。彼はヒーバーにある電話ボックスから姉の家にコレクトコールをかけ、助けを求めた。迎えに来た兄が見たのは、憔悴しきった弟の姿だったが、ウォルトン自身には5日間の記憶が抜け落ちていた。「ほんの数時間気絶していただけだ」と思っていた彼は、自分が5日間も行方不明になっていたと知らされ、愕然とする。
その後、彼は退行催眠を受けることで、失われた時間の記憶を取り戻していく。そこで語られたのは、宇宙船内部での身体検査や、人ならざる存在との遭遇という、あまりにも鮮明で恐ろしい体験だった。

町を変えた「エイリアン特需」
この事件は地元に大きな変化をもたらした。ヒーバーとオーヴァーガードには、世界中からUFOファンが訪れるようになったのだ。地元の店ではエイリアン関連のグッズや「エイリアン・ラブ(スパイス)」が売られ、ウォルトンが助けを求めた電話ボックスは観光名所となっている。
一部の住民からは「嘘つき」「ヤク中」といった批判的な声も上がるが、多くのビジネスオーナーはこの特需を歓迎している。「エイリアン・ハウス」を作って自宅を観光地化した住民もいるほどだ。
真実と疑惑の狭間で
事件から半世紀が経った今も、真偽を巡る議論は尽きない。懐疑論者は、契約期限に間に合わない伐採作業をごまかすための狂言説や、薬物の影響説を唱える。しかし、ウォルトンや目撃者たちは嘘発見器テストをパスしており、現場周辺の樹木の成長速度が異常に早いことなど、説明のつかない点も残されている。
ウォルトンは言う。「彼らは私を殺して捨てることもできたはずだ。でも彼らは私を回復させ、助けを呼べるところまで戻してくれた。彼らに悪意はなかったのかもしれない」。50周年記念イベントで、彼はかつての恐怖の現場に立ち、自身の体験と向き合い続けている。この事件は彼にとって、そして世界中のUFO信者にとって、まだ終わっていない物語なのだ。

参考:Phoenix New Times、ほか
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2024.10.02 20:00心霊伝説のUFOアブダクション「トラヴィス・ウォルトン事件」から50年、“失われた5日間”の謎のページです。エイリアン、アブダクション、トラヴィス・ウォルトンなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで
