米海軍史上最悪の悲劇。日本軍の魚雷、そして飢えたサメの群れ — 900人の漂流者が直面した「終わらない悪夢」

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 終戦間近の太平洋で撃沈した米海軍艦の乗組員たちは水面で救助を待つ間にサメの襲撃に遭い、必死に撃退を試みるも不運な乗組員が何人もサメに生きたまま捕食されたのだった――。

■撃沈した米海軍艦の乗組員がサメに食われる

 1945年7月29日、米海軍の重巡洋艦「インディアナポリス」は核兵器の重要部品をテニアン島に運ぶ極秘任務を終え、グアムへ向けて航行していた。1200人の乗組員を乗せた同艦には海軍兵学校を卒業したばかりの青年将校、ハーラン・トゥイブル少尉も乗っていた。

 日付が変わった7月30日深夜、艦が17ノットの速度で航行していたとき、日本海軍の「伊58」潜水艦から発射された2発の魚雷によって同艦は壊滅的な被害を受けた。1発のミサイルは艦首に命中し、2発目は艦の火薬庫近くに命中して、火薬庫を2つに分裂させた。

 爆発により艦は竜骨まで分断され、すべての動力源が失われ、艦首から急速に沈みつつあった。

 甲板上で若きトゥイブル少尉は周囲を見回したが、混乱した状況を指揮している士官は誰もいなかった。

「大変な状況だと分かりました」と彼は語る。

「そこで私が指揮を執り、つかまれるものなら何でもつかまるように指示しました。そして船の傾きが大きくなりすぎたので退艦命令を出しました。しかし誰も退艦しようとしません。その時、私は『ついて来い!』と叫びました」(トゥイブル)

 先陣を切ってトゥイブルは海に飛び込み、周囲の乗組員たちも後に続いた。

 インディアナポリスはわずか12分で沈没し、最後まで艦を離れなかった300人近くの乗組員がすぐさま犠牲になった。船体が波間に消えると、900人の乗組員は太平洋を漂流することになる。

 波間に漂う彼らは救助を待つしかなかったが、不運にもさらなる試練が待ち受けていた。サメの襲撃に直面したのだ。海に浮かんでいた少なくない乗組員はサメに襲われ犠牲になった。その中には生きたまま捕食されたものもいた。

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画像はUnsplashOleksandr Sushkoより

「皆、死ぬほど怖がっていました」と彼は語る。

「18歳か19歳の若者ばかりでした。争いも騒ぎもありませんでした。でも、皆怖がっていました」(トゥイブル)

 朝までに浮かんでいた乗組員は急激に減っていき、生存者数はわずか325人にまで減少していた。そして彼自身も、艦隊を壊滅させた怪物たちと対峙することになる。

「私たちは、乗組員たちには助かると信じ込ませようとしましたが、私たちが助かるなんて、到底信じられませんでした。私が本当に恐れていたのは、自分自身のことではなく、乗組員たちのことでした。一番の懸念は救える者が救えなかったことでした」(トゥイブル)

 残忍なサメの襲撃の正確な数は不明だが、トゥイブルのグループは幾度となくサメに遭遇し、彼は「サメ監視隊」を組織してサメの動きを追い、近づいてくると殴ったり蹴ったりして必死で撃退した。それでも獰猛なサメはグループに甚大な被害を与えたのだった。

 トゥイブルは絶望のあまり、漂流する残骸から遺体を切り離し海へ放ってサメをかく乱しようと試みたという。

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 4日5晩の過酷な戦いの後、生存者たちはついに定期哨戒中の米海軍機に発見された。生存者はわずか316人であった。これは米海軍史上最悪の悲劇の一つとなった。海軍に残ったトゥイブルは、この出来事について語り続けることが重要だと考えていると語った。

 船を放棄するという決断について、彼は「あの乗組員たちに命じた決断ほど重要な決断を私がこれまでに下しただろうか。あれは私が人生で下した最大の決断の一つでした。私は全員の命を賭けて、我々が勝利することを誓ったのです」 と語る。

 海上で沈没した米軍艦で、これほど多くの乗組員を失った艦はほかににないとされている。この時に初めて部下を率いた青年将校の退艦命令はその後も“人生最大の決断”として彼の記憶に刻まれたのだった。

参考:「Mirror」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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