150年解けない未解決ミステリー、空から肉が降り続けた数分間 ― 1876年「肉の雨」事件
※当記事は2020年の記事を再編集して掲載しています。

自然には、決して説明のつかない奇妙な現象がある。今から150年前の1876年3月3日、明るく晴れた午後、米ケンタッキー州バース郡オリンピア・スプリングスの農夫の庭に、奇妙な落下物が発生した。それは、「肉の雨」であった――。
■快晴の空から“肉片”が降ってきた
農夫アレン・クラウチの妻は、その日の午後、肉が降ってきた時に、家の玄関口で石鹸を作っていた。西から微風が吹いていたが、空は晴れ、太陽は明るく輝いていた。
その時、クラウチ夫人は、何の前触れもなく突然、肉片が「地面をたたく」ように降ってきたという。そしてその場にクラウチ家の猫が走り寄り、この不思議な肉片を数切れ食べてしまった。しかし、猫はその後ぴんぴんしていた。
この出来事は当時、「サイエンテフィック・アメリカン」誌、「ニューヨーク・タイムズ」紙および他にもいくつかの出版物で報告され、米国中の研究者がこの奇妙な現象に興味を持った。
当時、「オークランド・トリビューン」紙は「肉片は細切れで、それは小さなかけらから、大きいものは8センチほどの正方形の塊であった」と報道している。
数日後には、この説明できない「天からの贈り物」は、腐りはじめた。その肉を試しに口にした人は「それは牛肉かあるいは鹿肉のような味がする」と言ったという。
地元のハンター、ベン・エリントンは、農場に落ちた肉片を見て、もしこれが肉なら、熊肉に違いないと断言した。エリントンは、その肉から染み出たべたべたとした脂を触り、これは熊肉が古くなった時に出る液体だと説明した。
一方、地元の肉屋は、その肉を一口食べてみて「肉、魚、家畜の鳥のいずれの味もしなかった」と感想を述べた。
その後、この「肉」は採取され、分析のために「ニューアーク科学協会」の実験室に送られた。当時、サンプルをテストしたアラン・マクレーン博士の分析では、この肉状の物質は「馬または人間の乳児の肺組織」であるというものであった。
ほかにも諸説があり、その1つに、これは肉ではないというものがあった。その物質は、しばしば湿った土壌に存在する「ノストック」と呼ばれる細菌で、暴風雨の後に、肉によく似たゼリー状の塊を形成することがあるという。そしてその細菌の塊は、しばしば雨と共に落ちてくると言われている。
またある人はその肉は宇宙から来たと信じ、ある人々は神から遣わされた「恵みの食物」のような超自然的な物質である、と信じたという。
■ハゲワシの仕業なのか

そして、より説得力のある合理的な説明に「ハゲワシ」がいる。ハゲワシは何かに驚いた時、身体を軽くして、素早く飛び立つために、最後に食べた物を吐くことが多いという。つまり、この肉はハゲワシが上空で吐いた物だというのだ。
L・D・カステンビン博士は「ルイビルメディカルニュース」の1876年版に次のように書いている。
「この異常な落下物は、その場所を飛んでいたハゲワシが吐いたものであるということが、唯一の合理的な説明だ。非常に高い上空から落とされたので、肉は風によってばらばらになり、散乱したのだ」(カステンビン博士)
そして見つかった物質には、筋肉、結合組織、脂肪組織などがあり、それはこの理論のみによって説明できると述べた。
しかし、小さな限られた場所に、肉の雨が数分間も降り続いたという証言は、この説明とは相いれないものがある。

さて、現在もこの「不思議な肉」への探求はやんでいない。
2004年に、米ケンタッキー州トランシルバニア大学のクルト・ゴーデ教授は、大学の収納クローゼットを片付けている時、コルク栓で密封された古いガラスの瓶につまずいた。
その瓶には濁った淡黄色の液体に、白い脂肪質の肉の塊が漬けられていた。ラベルは色あせていたが、かろうじて「オリンピア・スプリングス」という文字が読み取れた。コーデ教授は興奮し、それを検査に送ったが、残念なことに瓶の中の肉は腐乱が進みすぎ、正確な検査ができなかった。
しかしゴーデ教授は、これで調査を終わりにはしなかった。教授は、シンシナティに本拠を置く味覚研究所で、肉サンプルのフレーバーを分析し、その味をジェリービーンとして再現した。そして、その「瓶の中の肉風味」のジェリービーンズを作り、ケンタッキー州の最も古い祭りの「コート・デイズ・フェスティバル」で、人々にそのサンプルを配った。
ある人は、その暗赤色のジェリービーンズの味は、生のベーコンに似ていると考えた。別の人は、それは「ストロベリー・ポークチョップ」のような味がすると言った。ゴーデ教授自身は、その風味を「金属のような後味のある、かなり甘いベーコン」に最も似ていると話している。
はたして「肉の雨」は、いったいどこから降ってきたのだろうか。「乳児の肺組織」という分析も一部にはあったようだが、そうだとしたら、かなり後味の悪い事件である。
参考:「Daily Star」、「Atlas Obscura」ほか
文=三橋ココ
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