クルーズ船ハンタウイルス集団感染は序章にすぎない? 科学者が警告する気候変動により南米全土へ”大移動”する齧歯類ウイルスの恐怖

クルーズ船ハンタウイルス集団感染は序章にすぎない? 科学者が警告する気候変動により南米全土へ"大移動"する齧歯類ウイルスの恐怖の画像1
イメージ画像 Created with AI image generation

 クルーズ船での豪華な船旅が、まさか「ネズミ由来の出血熱」で命取りになるとは誰が想像しただろうか。大西洋のカーボベルデ沖に停泊したままのMVホンディウス号では、すでに死者が3名に上り、多くの乗客が船内に足止めされている。感染源とみられるのはハンタウイルス——齧歯類(げっしるい)が媒介する、ワクチンも特効薬も存在しない厄介なウイルスだ。

 そしてこの惨事を前に、科学者たちは「これはあくまで序章にすぎない」と声を上げ始めた。気候変動によってネズミの生息域が劇的に変化し、これまで感染リスクのなかった地域にも致死性ウイルスが「大移動」してくる——そんな警告が、最新の研究から突きつけられている。

死者3名、停泊を続けるMVホンディウス号の惨状

 オランダ船籍のMVホンディウス号は、南米アルゼンチンに寄港した後に大西洋へと向かった。その航路上で複数の乗客がハンタウイルスに感染し、オランダ人夫婦とドイツ人の計3名が命を落とした。世界保健機関(WHO)は6件の感染を公式に確認しており、約150名が依然として船内に残っている状況だ。

 オランダ国立公衆衛生環境研究所の報道官はロイターに対し、「船内のネズミが感染源となった可能性も考えられる。あるいは南米の寄港地でネズミなどを介して感染した乗客が、船上で発症したケースも否定できない」と語った。はっきりした感染経路はまだわかっていないが、アルゼンチンではハンタウイルスもアレナウイルスも毎年数十人の死者を出す「身近な脅威」として存在しているのは確かだ。

「南米全土で数百万人に達する」AIが弾き出した拡散シナリオ

 問題は、ハンタウイルス単体にとどまらない。UCデービス・ワイル獣医学大学院のプラナフ・クルカルニ博士らの研究チームは、機械学習を使って気候変動予測・人口密度・感染リスク・6種の齧歯類の生息適地データを組み合わせ、向こう20〜40年の「アレナウイルス拡散マップ」を描き出した。その結果は、お世辞にも楽観的とは言えない内容だった。

 アレナウイルスとは、ハンタウイルスと同様に齧歯類を宿主とするRNAウイルスの一群で、感染すると激しい出血熱を引き起こす。致死率は種類によって5〜30%と幅があり、抗ウイルス薬は存在しない。ベネズエラ・コロンビアに分布するグアナリトウイルス、ボリビア・パラグアイのマチュポウイルス、アルゼンチンのフニンウイルスが代表格だ。知名度こそ低いが、現地では非常に危険な存在だ。

 クルカルニ博士は論文の中でこう述べている。「気候変動が加速するにつれ、危険なアレナウイルスの感染拡大リスクが、齧歯類の生息域移動に乗って南米全土の数百万人規模にまで及ぶ可能性を、本研究は示している」。

クルーズ船ハンタウイルス集団感染は序章にすぎない? 科学者が警告する気候変動により南米全土へ"大移動"する齧歯類ウイルスの恐怖の画像2
画像は「Daily Mail」より

ネズミが”未踏の地”に運ぶウイルス、免疫ゼロの人々を直撃

 具体的なシナリオはこうだ。現在ベネズエラ中部にとどまっているグアナリトウイルスは、コロンビアやスリナム国境地帯、ブラジル北部へと拡散する。ボリビア出血熱を引き起こすマチュポウイルスはボリビアの平野部からアンデス山麓へと侵入し、フニンウイルスはアルゼンチンの草原地帯を超えて国内各地に広がる見込みだという。

 この拡散を後押しするのは、気温・降水量の変化による齧歯類の生息域変化に加え、農地や都市の拡大だ。人間がネズミの生活圏に踏み込む機会が増えれば増えるほど、感染リスクは高まる。研究共著者のプラナフ・パンディット博士は「気候条件や土地利用の変化、齧歯類の生息域シフト、ヒトへの感染リスクの点と点をつなぐことで、次世代のアレナウイルス集団感染がどこで生まれるかが見えてくる」と述べている。

 とりわけ深刻なのは、こうしたウイルスがこれまで到達したことのない地域の住民が「免疫ゼロ」の状態でウイルスにさらされるという点だ。過去に感染経験のない集団は、感染した場合に重症化しやすく、医療体制の整備も遅れている場合がほとんどだ。いわば「ゼロから始まるパンデミックリスク」が、複数地点で同時に生まれかねないというのだ。

気候変動が”病原体の地図”を塗り替えていく

 ラッサ熱やハンタウイルスなど、他の齧歯類媒介疾患でも、気温や降水量の変化が感染リスクに大きく影響することはすでに研究で示されている。アルゼンチン出血熱を媒介するドライランドベスパーマウスの分布も、気候変動によって「大幅な変容を遂げる」とされており、今回の研究はその流れの延長線上に位置する。

 カーボベルデ沖で今まさに起きているクルーズ船の惨劇は、「齧歯類ウイルスが国境を越えて広がる」という現実を、非常に生々しい形で世界に見せた。だが研究者たちが懸念するのは、それが氷山の一角にすぎないという事実だ。気候変動がこのまま進めば、ネズミたちは誰も「歓迎」などしていない新しい土地へ、静かにウイルスを運び続けるのかもしれない。

参考:Daily Mail、ほか

関連キーワード:, ,
TOCANA編集部

TOCANA/トカナ|UFO、UMA、心霊、予言など好奇心を刺激するオカルトニュースメディア
Twitter: @DailyTocana
Instagram: tocanagram
Facebook: tocana.web
YouTube: TOCANAチャンネル

※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。

人気連載

“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

2024.10.02 20:00心霊

クルーズ船ハンタウイルス集団感染は序章にすぎない? 科学者が警告する気候変動により南米全土へ”大移動”する齧歯類ウイルスの恐怖のページです。などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで