深海1500mで「首長竜」がこちらを見ていた!? 潜水艇アルビンの操縦士が語った1965年の怪物遭遇と消えた航海日誌

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 海の怪物の目撃談は、たいてい海面から突き出た首や背中を遠目に見たというものだ。だが、1965年にバハマ沖で起きたとされるこの一件は違う。

 舞台は水深約1500mの暗黒の海底。目撃者は、深海調査の歴史に名を残す有人潜水艇「アルビン」の操縦士マーヴィン・マッカミス氏(1923〜2004年)である。彼が強力なライトの先に見たのは、長い首とヒレを持つ巨大な生き物だったという。

海底ケーブルを追っていた操縦士の前に現れた「ヒレのある大トカゲ」

 アルビンは米ウッズホール海洋研究所が1964年に就役させた小型の有人潜水艇だ。米海軍が資金を出した目的の一つは、バハマのアンドロス島沖にある海溝「タン・オブ・ジ・オーシャン(大洋の舌)」に敷設された海軍の水中聴音網ARTEMISを点検することだった。

 1965年7月、マッカミス氏と同僚のビル・レイニー氏(1924〜1985年)を乗せたアルビンは、海底のケーブルを追って水深約1500mを進んでいた。ケーブルが裂け目を横切っていたため、さらに約90m下へ降りたところで、マッカミス氏は何かが動いていることに気づいたという。

 艇が流されているのかと疑ったが、動いていたのは物体のほうだった。柱かケーブルのようにも見えたそれは、艇を回り込ませてみると、ヒレのある分厚い胴体、長い首、そしてこちらに2つの目を向けた蛇のような頭を備えていたと同氏は証言している。

 本人はそれを、2対のヒレを持つ大きなトカゲのようだったと表現した。見えた部分だけで約12〜15mはあったという。生き物は背を向けて上方へ泳ぎ去り、艇の前方5〜8mに焦点を合わせていたカメラは向きを変える間もなかった。気味が悪くなったマッカミス氏は、そのまま浮上を選んだとされる。

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消された日誌の記述と「ありえない年号」

 話をさらに謎めかせているのが、航海日誌の存在だ。マッカミス氏は目撃をアルビンの日誌に書き込んだが、後に清書版からその部分が削られていたと語っている。海軍が荒唐無稽な話として消したという説まである。

 この話を世に広めたのは、「バミューダトライアングル」の著作で知られるチャールズ・バーリッツだ。1977年の著書『Without a Trace』で紹介したが、彼は出来事を1969年としていた。ところがアルビンは1968年10月に事故で沈没し、1969年夏の終わりまで海底に沈んだままだった。つまり1969年の目撃はありえない。

 1990年代後半、研究家のスコット・マーディス氏の取材に応じたマッカミス氏は、目撃を改めて認めたうえで、正しくは1965年7月だったと訂正したという。

 一方で、検証上の弱点もある。バーリッツの仲間で博物学者のマンソン・ヴァレンタインが首長竜(プレシオサウルス)の絵を描いて見せたところ、マッカミス氏はまさにこれだと答えたとされる。後から特定の絵を見せる手法は、記憶をその姿に引き寄せてしまうおそれがある。また「2人の目撃者」とされることが多いが、証言が記録に残っているのはマッカミス氏だけで、レイニー氏本人の談話は見つかっていない。

首長竜か、深海の未知の生物か

 正体として最も派手なのが、約6600万年前に絶滅したはずの首長竜の生き残り説だ。2対のヒレを持つ長い首の爬虫類という描写はよく一致し、UMA研究家のカール・シューカー氏も、専門家が水中で全身を見た貴重な事例として高く評価している。ただし空気を呼吸する爬虫類が、冷たい深海で暮らせたのかという大きな疑問が残る。

 ほかにも、首の長いアザラシ型の未知の哺乳類説、ダイオウイカの見間違い説、クダクラゲのような細長い群体生物が暗闇で脊椎動物に見えたという説もあるが、どれも決め手に欠ける。

 写真も映像もなく、日誌の原本も見つかっていない。それでも、深海のダイオウイカが生きた姿で撮影されたのは21世紀に入ってからだ。人類がまだほとんど覗いていない深海に、私たちの知らない何かが首をもたげていたとしても、驚くには当たらないのかもしれない。

参考:Mysterium Incognita、ほか

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