ネッシー映像は「おそらく生き物」と英軍の画像分析部隊が判定していた!? 国防閣僚の「内密に」書簡で60年前の分析が再び脚光

Photo: M. A. Wetherell / Wikimedia Commons (Public Domain)

 ネッシー研究の歴史の中で、半世紀以上語り継がれてきた「英軍のお墨付き」が、いま再び注目を集めている。1960年に撮影された湖面の映像を、英国の航空偵察画像の分析機関が「おそらく生物」と判定していた件だ。

 分析そのものは古くから知られた話である。今回新たに浮上したのは、国防省の閣僚がこの調査への関与を表に出さないよう求めていたとされる書簡の存在だ。

元RAFパイロットが撮った16ミリフィルムの「航跡」

 発端は1960年4月23日。航空技術者で元英空軍(RAF)パイロットのティム・ディンスデール氏は、ネス湖東岸フォイヤーズ近くの高台から湖面を見張っていた。巨大な未知の動物の噂を確かめるため、わざわざスコットランド高地まで足を運び、数日間双眼鏡で湖を探し続けていたのだ。

 滞在最終日、遠くの湖面を進む黒い物体に気づいた同氏は、16ミリの撮影機を回した。映像には、航跡を引きながらカメラから遠ざかっていく不鮮明な物体が記録されている。

 このフィルムは、ネッシー実在派にとって最も影響力のある証拠の一つとなった。ただ、距離が遠く、はっきりした特徴も映っていないため、解釈は当初から難しかった。

偵察写真のプロ「JARIC」が下した判定

 その後、ネス湖現象調査局がこの映像を英国の統合航空偵察情報センター(JARIC)に持ち込んだ。JARICは空からの偵察写真を読み解く専門機関で、悪条件の画像から対象を特定する訓練を積んだ分析官を抱えていた。

 分析官たちは物体の大きさや動き、特徴を検討し、1966年初頭に写真判読報告書をまとめた。その結論は、映っている物体はおそらく生命体であり、湖面を漂う無生物ではない可能性がある、というものだった。

 もっとも、報告書はネッシーの実在を証明したわけでも、未知の生物種を特定したわけでもない。それでも、技術的な評価をなかなか得られずにいた研究者たちにとっては大きな後押しとなった。

 この関与は後世の脚色ではない。英イースト・アングリア大学のアーカイブには、政府の首席科学顧問を務めたソリー・ズッカーマン氏の文書として、1961〜1966年のネス湖調査関連資料39点が保管されている。その中には写真判読報告書「65/269」「66/1」のほか、RAFの専門家が怪物の実在を否定していないと伝えた1966年2月の英紙記事も含まれている。

なぜ国防省は「関与」を伏せたがったのか

 今回の再注目のきっかけは、英紙タイムズが2026年10月25日に報じた書簡の内容だ。同紙によれば、1967年1月、国防省の閣僚だったシャクルトン卿が、ネス湖の研究者デヴィッド・ジェームズ氏に対し、政府の関与について慎重に扱うよう求めていたという。物笑いの種になることや、望まない注目を浴びることへの懸念があったとみられている。

 この書簡は、ネス湖研究の第一人者エイドリアン・シャイン氏が10月20日に刊行した新著『A Naturalist’s View of the Loch Ness Enigma』の調査を通じて再び浮かび上がった。ただし、書簡の原本は公開されておらず、文言や文脈の詳細はタイムズの報道と同書の研究に依拠している段階だ。

 もちろん、世間の注目を避けたいという姿勢と、組織的な隠蔽とはまったく別物である。映像についても、遠近感で形がゆがんだモーターボートではないかという説が根強い。シャイン氏自身も2003年にこのフィルムを再検証し、JARICの判定を未知の生物の確定的な証拠とみなすことに疑問を投げかけている。

 それでも、軍の分析官が名高いフィルムを精査し、物体はおそらく生きていると結論したこと、その件に国防閣僚までが神経をとがらせていたとされることは興味深い。ディンスデール氏のカメラが1960年4月に捉えたものは、少なくとも英国防当局の机の上まで届いていたのだ。湖底に眠る答えが何であれ、ネッシーの物語はまだ新しいページをめくり続けている。

参考:Above The Norm News、UEA Archive Collections(SZ/CSA/152)、ほか

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