ネス湖に35年住む「プロのネッシーハンター」の生活とは? 仕事を辞め、妻と別居してまでネッシーを探し続ける理由

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 スコットランドのハイランド地方に広がる、深く冷たい湖「ネス湖」。この湖の底には、世界で最も有名な未確認生物「ネッシー」が潜んでいると言われている。

 多くの人にとって、ネッシーはテレビのオカルト番組で楽しむだけの「都市伝説」に過ぎないだろう。しかし、イギリスにはこの伝説の怪物を本気で探し続けるために、自分の人生のすべてを捧げてしまった男がいる。

アラーム取付の仕事を辞め、ネス湖のほとりへ

 スティーブ・フェルサム氏(63歳)は、7歳の頃からネッシーの魅力に取り憑かれていた。そして1991年、20代半ばだった彼は、「冒険がしたい」という強烈な衝動に駆られ、ドーセット州での防犯アラーム取り付けの仕事をキッパリと辞めた。

 彼は古い移動図書館のバンを買い取り、それを「ネス湖モンスター対策本部」と名付けて、ネス湖畔のドアーズ・ビーチに住み着いた。それから35年という途方もない歳月、彼は毎日湖を見つめ、ネッシーの姿を追い続けている。

 彼はいわゆる「週末だけUFOを探しに行くオカルトマニア」ではない。人生を完全にネッシーにフルベットしてしまった、プロの「ネッシーハンター」なのだ。

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画像は「METRO」より

最初で最後の目撃「魚雷のように波を切り裂く白い影」

 35年間も毎日湖を見ていれば、さぞかし何度もネッシーと遭遇しているだろうと思うかもしれない。しかし、彼が「本物だ」と確信できるものを目撃したのは、なんとネス湖畔での生活を始めた「最初の1年目」にたった一度きりだという。

「あれは運河の端に車を停めていた時でした。湖には波が打ち寄せていたんですが、何かが水面を突き抜け、向かってくる波にぶつかって水しぶきを上げながら、まっすぐ進んでいくのが見えたんです。まるで魚雷のように」とスティーブ氏は『The Sun』紙に語っている。

「ジェットスキーのようにも見えましたが、そこにジェットスキーはありませんでした。ただ『白い筋』がものすごいスピードで水面を移動していくのを見ただけです」

「しまった、写真を撮るべきだった。それが私の仕事なのに!」と悔やんだ彼は、「まあいい、すぐにまた次のチャンスが来るだろう」と高をくくった。しかし、それ以来30年以上、あの「白い筋」が彼の前に姿を現すことはなかった。

偽物(フェイク)との終わらない戦い

 現在、彼の日々の仕事は「ネッシーを探すこと」だけではない。実は、彼の時間の多くは「偽物の目撃情報を論破すること」に費やされている。

「寄せられる目撃情報の90%は、見間違いやごく普通のもの(流木や波、ボートの引き波など)で説明がつきます。しかし残りの10%には、説明のつかないものや、悪意のある意図的な捏造が含まれているんです」

 特に近年はAIの進化により、「ベッドルームにいるティーンエイジャーでも、アプリを使えば簡単にネッシーのフェイク写真が作れる時代」になってしまった。35年前、純粋な冒険心でネス湖にやってきた彼も、「まさか自分の仕事の多くが、フェイク写真の論破に費やされることになるとは思わなかった」とぼやいている。

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1934年に撮影された「外科医の写真」 M・A・ウェザレル[1], [2], パブリック・ドメイン, リンクによる

ネス湖が結んだ愛と別居生活

 ネッシーは彼に富と名声をもたらさなかったかもしれないが、「愛」はもたらしてくれた。
彼は20年前、このネス湖のほとりで現在の妻であるヒラリーさんと出会い、ロックダウン中に結婚した。

 驚くべきことに、現在二人は「別居」している。不仲になったわけではない。スティーブ氏が「ネッシーの研究(湖の監視)」に専念できるようにするため、ヒラリーさんは近くのインヴァネスの町に住み、彼は相変わらず湖畔のバンで暮らしているのだ。もちろん、二人は定期的に会って愛を育んでいる。なんとも理解のある奥さんである。

 スティーブ氏は現在、観光客とネッシーについて語り合い、自作のネッシーの粘土細工を10〜20ポンド(約2000〜4000円)で売りながら生活費を稼ぎ、毎日湖を見つめ続けている。

 今年3月には、アメリカ人の観光客が「カレドニア運河の入り口近くで、暗緑色の体が水面から2フィート(約60センチ)突き出ているのを見た」という新たな目撃情報が報告され、再びネス湖は活気を取り戻している。

 35年間待ち続けた「2度目のチャンス」が訪れるその日まで、スティーブ・フェルサム氏は今日もスコットランドの冷たい風に吹かれながら、愛する妻と離れて、ただひたすらに湖面を見つめ続けるのだ。

参考:METRO、ほか

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