京都・ウトロ地区 ― 安住の地を求めた在日コリアンの軌跡
京都府宇治市伊勢田町51番地。近隣の地域に住んでいる者ならばいざ知らず、そうでない大多数の人々にとっては、おそらくあまりピンとこない地番であろう。しかし、この地域の通名である「ウトロ地区」という名を聞けば、多くの人々が一度は耳にしたことのある地名と言えるかもしれない。
■通名でありながら公共物に名を刻むウトロ
しばしばネット上で「アンタッチャブルな地域」としてその名が挙げられるこのウトロ地区は、今なお現存する在日韓国・朝鮮人の集住地域である。手元の資料によると、この地区には2008年時点で全65世帯・203人の韓国系住民が暮らしていたとされるが、そのうち何割が現在も居住中なのかは不明だ。また、後述する歴史的背景から、この地区に住む人々は事実上、土地を不法占拠した状態にあり、それを示すのように、これまでも立ち退きトラブルがしばしば巻き起こっている。
なお、冒頭でも触れたように、この地区の名称である「ウトロ」という名は通名であるが、その一方で、現地に立つ電柱のプレートには「ウトロ」の文字が確認できる。本来であれば正式名称として記されるハズのない名称でありながらも、近隣の人々にとっては「実在するもの」として位置づけられ、多くの人々が暮らし、公共物にその名を刻むウトロ地区。こうしたある種のダブルスタンダード的な要素が、この地区が持つ特異性を象徴しているように思う。
地区の入り口付近に立つ老朽化した家の壁面には、『ウトロ町づくり基本方針』と銘打たれた看板が掲げられている。またその傍らには『集会宣言』と付された『オモニのうた』という散文らしき文字もある。それぞれ2007年、2002年と記されているが、現在ではこうした看板以外に、住民らの「戦い」を感じさせるものはほとんど見当たらない。『ウトロに愛を』という日本語とハングルが併記された別の看板も、実際に設置されてから相当な歳月が流れているようだ。
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