月にはなにが住んでいる? 『かぐや姫の物語』からはじめる東西のコスモロジーと月の価値
本や雑誌、インターネット、そしてSNSによって膨大に情報が飛び交う現代社会において、その情報の真偽をチェックする判断力は重要だ。しかし、ウソかホントかばかり気にしていては「ケツの穴が小さいヤツだ」「細けえことはいいんだよ」などの誹りは免れない。むしろ、真実よりも甘く、大事なウソを楽しめてこそ、余裕がある大人として認められるのではないだろうか。本連載「教養としての神秘主義」では、そんな大人のためのミステリー情報をお伝えしていく――。
教養としての神秘主義 第7回
月と宇宙論
昨年2013年は宮崎駿監督の『風立ちぬ』と、高畑勲監督の『かぐや姫の物語』という2本のアニメーション映画が公開され、ジブリ映画ファンにはうれしい1年となった。興行収入のデータを見てみると『風立ちぬ』の興行収入は120億円を突破しているといわれ、2013年に公開された映画では堂々1位の成績。『かぐや姫の物語』も約20億円といわれており、『ダイハード ラスト・デイ』『ローンレンジャー』『ワールド・ウォーZ』などのハリウッド大作に並ぶヒット作となっている(出典:映画ランキングドットコム『日本国内 2013年 年間総合興行収入ランキング』)。
興行成績だけをとれば『風立ちぬ』と大きく水をあけられた『かぐや姫の物語』だったが、先日発表された毎日映画コンクールではアニメーション映画賞を受賞するなど、非常に高い評価を得ている。私も劇場で鑑賞したが、話題になったスケッチ風の表現は「絵が生き生きと動いている」という、原初的なアニメーションの快楽をまざまざと見せつけられるようで、ただただ感激するしかなかった。
とくに、かぐや姫が月へ帰還するシーンで、月から雲にのってやってくる仏と天女の動きは、重力の制約から解放され、自由に描かれるアニメーションならではの素晴らしい表現だったと思う(このシーンで使用されている久石譲のスコアも素晴らしかった。ケルティック・ハープや南米の小型ギター、チャランゴのなかに篳篥などの和楽器を違和感なく調和させた多国籍の音色は、天上の異境感を巧みに演出している)。
ところで「月からやってくる仏と天女」のシーンで、現在『月刊アフタヌーン』(講談社)で連載中の市川春子による漫画『宝石の国』を思い出したのは、私だけではあるまい。人間の形象をもち、不死のカラダを持つ宝石たちを主人公におき、その美しさに惹かれ、彼らを装飾品にしようと日々襲いかかる月人たちとの闘いを描いたこのSFファンタジーにおいて、主人公たちの敵である月人たちは、月から雲に乗って現れる「天女」の集団として描かれている。この描かれ方は『かぐや姫の物語』の仏と天女たちの姿と性格こそまるで違うものの、とてもよく似ていた。
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