悲劇の現象学 Vol.4

なぜ、沖縄人は本来の名前を隠すのか? JR福知山線脱線事故が遺した、沖縄差別の歴史と記憶

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分析心理学の父、カール・グスタフ・ユングは、「シンクロニシティ」という概念を唱えた。一見、関連がないように見える事象が相互につながり合っていることを説いたのだ。かつてメディアを賑わせた凄惨な事件や悲劇的な事故。その現場に残された〝遺物〟をたどると、忌まわしい記憶と、我々が過ごす平凡な日常をシンクロさせる見えない糸が浮かび上がってくる。事件記者が綴る暗黒のアナザーストーリー「悲劇の現象学」シリーズ

なぜ、沖縄人は本来の名前を隠すのか? JR福知山線脱線事故が遺した、沖縄差別の歴史と記憶の画像1画像は、JR福知山線脱線事故「Wikipedia」より

【第4の遺物 福知山線脱線事故と沖縄】

 死者107名、負傷者562名を生む大惨事となったJR福知山線脱線事故が起きて、まる9年がたった。

 スピードと効率を最優先し、安全意識を疎かにするJR西日本の企業体質や、「日勤教育」と呼ばれる乗務員への懲罰制度、過密ダイヤ…。事故原因が追及されていくのに伴い、日本の交通インフラが抱える構造的問題をも浮き彫りにした。


■乗客名簿に記された沖縄人の名前

 事故が起きたのは尼崎から宝塚に至る区間。乗客の多くも、阪神エリアに住む人々だったが、犠牲者名簿の中にこの土地の因縁を物語る名前があった。

「亡くなった方の中に、喜屋武さんという人がいた。沖縄由来の苗字。現地では『きゃん』と読むのが普通だが、亡くなった方の読みは、本来の読みでなく、本土風の『きやたけ』、だった」(事故を取材した新聞記者)

 大阪市内に、沖縄県出身者が数多く集まる「大正区」という集落があることは広く知られている。

 実は、JR福知山線の起点となる尼崎にも、沖縄からの移住者が多く住む地域が存在する。

 事故の犠牲になった2人も、何らかの事情で海を渡った「うちなんちゅ(沖縄人)」の類縁になるわけだが、あえて古里での苗字の読みを変えたのには理由があるのだ。

「苗字の読みをあえて変えたのには、出自を隠す意味合いもあったようです。かつて、『うちなんちゅ』であるというだけで差別を受ける時期があった。事故で亡くなった2人がそうした理由で読みを変えたのかは定かでないが、何らかの事情があったのは間違いない」(郷土史研究者)

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