水虫で自殺未遂?病気の自己診断に潜む危険性

 すると、医師は患部を一瞬見て、「悪性のあせもですね」とはっきり言った。

 私は「あせも? あせもで、こんなになるんですか?」と聞いた。すると、この症状はよくあるものらしく、机の片隅に置かれた説明書きを私に見せた。

「あせもが悪化すると、こうなるんですよ」と説明した。

 では足は何なのか? と思い、靴下を脱いで患部を見せた。やはり「あせもですね」とひと言。悩みながらも、せっかく皮膚科に来たのに、あせもか…と。

 説明書きに書かれていたのは「異汗性湿疹と多発性汗腺腫瘍」。異汗性湿疹は、手指の側面や手のひらに水疱ができる。足にできる場合もある。私の場合は、足に最初にできた。

 最初は、「水虫か? あるいはそれに似たもの」と自己診断してしまったが、違っていた。水虫とは違い、他の部位にも他人にも感染しない。

 水虫が手に感染する可能性もゼロではなかったが、「一日中、水気や湿気のある場所での作業をしている場合などはあり得るが、通常の生活では菌が不着したとしても、症状には出ない」との説明があったので、限りなく低いものだった。

 水虫の場合は、そもそもの原因が「白癬菌」というカビの一種だ。その菌が足に付着して、傷付いた角質から入り込んで繁殖する。白癬菌は高温で多湿な場所を好む。まさに靴の中はそうで、汗や汚れがあると繁殖しやすい環境だ。

 菌が付着しても、清潔にしていれば感染予防になるが、異汗性湿疹や多発性汗腺腫瘍と間違いやすい。見分けがつかない。

 しかし、そもそも私は水虫の患部を見たことがあるのか? と考えたら、見たことがないではないか。ずっと勝手な思い込みをしていたわけだ。

 それにしてもなぜ、私が水虫だと思い込んだか。どこかで感染したのかと考えたのが最初だ。マッサージ屋に行った後だったというのが大きい。マッサージ屋にはいろんな人が来るし、たとえ部屋が清潔に保たれていたとしても、それ以外の感染源がある(たとえば、スリッパ)。

 また、薬局でそれは「水虫じゃないですか?」と言われて、「きっと水虫だ」と思い込んだ。それに、薬局で買った薬が一時的に効いたというのもある。思い起こせば、高校や大学時代も似たような症状が出たことがあった。私の人生はこの病気との闘いだったのだろう。
(文=渋井哲也)

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