500年間凍っていた少女! まるで生きているよう!? ~ミイラでわかった、インカ帝国の生贄の実態~
「マチュ・ピチュ」で有名なインカ帝国は「神」に生贄として命を捧げてきた。人身御供とも呼ばれるこの行為は「カパコチャ」として知られ、飢饉や皇帝崩御の神事の際に国の安泰を願い行われてきたという。今回は、過去に話題になったニュースとともに、カパコチャの実態に迫ってみよう。
1999年。アンデス山脈で500年前に生贄となった子どもたちのミイラが凍ったまま発見された。ほぼ原型のまま冷凍保存されていたこれらのミイラをあらゆる角度から分析した結果、驚くべき「カパコチャ」の背景が浮かび上がってきたのだ。幼くして生贄となった子どもたちの運命とは――。
■500年凍っていた少女。解剖すると驚くべき事実が…
1999年、アンデス山脈にある標高6,739mのユーヤイヤコ山で3体の子どものミイラが発見された。学者たちが「完璧だ!」と興奮するほど保存状態の良いミイラは約500年前のインカ帝国時代に神へ生贄として捧げられた子どもたちであった。
最年長の15歳の少女は身に着けていた装飾品に落雷があり一部焦げた部分があるものの、ほとんど外傷も無く、ふっくらとした肌は“まるで数週間前に亡くなったみたいだ”という。また500年もの間放置されていたにもかかわらず少女のミイラには心臓や肺に血液まで残っているのだ。ここまで状態の良いミイラは初めてであり、現在も様々な分野から解剖が進んでいる。
研究チームはこの少女を「ラ・ドンチェラ(スペイン語で“乙女”の意)」と名づけ毛髪を分析したところ少女の生い立ちや生前の食生活など様々なことが判明した。
ミイラとなった15歳の少女は農民の出であり、ジャガイモなどの野菜を主とする食生活を送っていたが、死の1年ほど前からトウモロコシや動物性たんぱく質からなる栄養価の高い“特別階級”の食生活へと劇的に変化しているという。今回発見された3体のうちこの少女にだけこの変化が顕著に現れていることから少女は“死の儀式”のための「巫女」のような役割を担っていたのでは、と考えられている。
また死の3、4ヵ月前になると「高山病」の気付け薬としても服用されていたコカの葉や、トウモロコシが原料の「チチャ」と呼ばれるビールのような酒を摂取していることから、この頃より祭司らと共に山への巡礼が始まったとされている。その後標高約6,730mの埋葬する場所へ到着すると祭司たちは痛みと抵抗を抑えるためチチャ酒とコカの葉を与え、もうろうとした意識の子どもたちを殴打・絞首したのだ。
15歳の少女の口内からは噛みかけのコカの葉が見つかっており、死の恐怖心を少しでも和らげようと多量に摂取したのか、埋葬前に意識を失いそのまま眠るように凍死したのだ。
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