世界でいちばん放射線量の高い場所10 ― 汚染惑星、地球を知ろう【PART1】

 2011年3月11日の東日本大震災と、その後の東京電力福島第一原子力発電所の現状をめぐる懸念は、わたしたちに放射能の脅威に対するある種の自覚をもたらした。だが、多くの人々はいまだ、放射能汚染(radioactive contamination)が地球規模の災厄であることに気づいていない様子だ。

 以下のリポート「世界でいちばん放射線量の高い場所10」は、放射性核種による汚染問題にとり組むNGO、ブラックスミス・インスティテュート(The Blacksmith Institute)が2010年に周知した報告などをもとに、そこに筆者が多少手を加えたものである─。

 ではいざ、白昼の地獄めぐりへ。もろともに、この星の清浄な明日を夢見て…。


■第10位 ハンフォード核処理施設、アメリカ/ Hanford, USA

世界でいちばん放射線量の高い場所10 ― 汚染惑星、地球を知ろう【PART1】の画像1

 アメリカ、ワシントン州にあるハンフォード核処理施設(The Hanford Site)は、1945年7月16日に、ニューメキシコ州アラモゴード砂漠で人類初の核爆弾となった「ガジェット」(The gadget)─これをトリニティ実験と呼ぶ─および長崎に投下された史上3番めの原爆「ファットマン」(Fat Man)用のプルトニウムを製造した原爆開発工場として、いまなお、歴史にその悪名を残している。

 その後、1989年まで続いた冷戦(Cold War)の緊張下、コロンビア川の岸辺に位置するこのサイトは60000個あまりの核兵器(nuclear weapons)にプルトニウムを供給するためフル稼働を続けた。

 ハンフォード核処理施設は、現在では操業を終えている。それでもここには、アメリカ国内の高レベル放射性廃棄物の3分の2が貯蔵されている。およそ5300万ガロンの液体廃棄物(liquid waste)と、2500万立方フィートの固形廃棄物(solid waste)、また敷地直下の200平方マイルにわたる汚染された地下水が、この地を全米で最も呪われた場所にしている。

 このエリアの深刻な環境破壊がわたしたちに告げるのは、放射能の脅威は単に、ミサイル攻撃(missile attack)に限らないという単純な事実だ。真の恐怖は核開発後の未来にまで持ち越されるという〈不都合な真実〉こそ、核時代の真の教えと言うべきだろう。

世界でいちばん放射線量の高い場所10 ― 汚染惑星、地球を知ろう【PART1】の画像2屋外の廃棄物置き場

 アメリカ・エネルギー省(DOE)は1989年以後、サイトの諸施設の解体と除染に着手した。だが、作業を必要とする場所は1400箇所以上にのぼる上、次々と深刻な汚染状況が明らかとなり、はたして1518平方キロメートルに及ぶこの広大な地に将来的な再生が可能なのだろうかという疑問が政府と国民の頭を悩ませている。

 ご参考までに用意した次の3つの動画はそれ自体、興味深いものに思える。1つは、日々規模を拡大せざるをえないこの処理施設の施工を請け負う、サンフランシスコに本拠を置く世界最大級の建設会社ベクテル (Bechtel Corporation)が制作した自社宣伝用の映像。そして残りの2つは、それぞれ書く処理施設の歴史を概述するもの、現在の問題点を指摘するものだ。あわせてごらんいただくと、あなたはもう以前のあなたには還(もど)れない。


■第9位 地中海海域/The Mediterranean

世界でいちばん放射線量の高い場所10 ― 汚染惑星、地球を知ろう【PART1】の画像3地中海に浮かぶサルデーニャ島の海岸

 過去何年にもわたって、イタリアのマフィア組織「ンドランゲタ」(‘Ndrangheta)が、地中海を有害廃棄物(hazardous waste)を不法に投棄する場所として利用してきたとの告発が絶えない。身の毛がよだつことだが、そこには相当量の放射性廃棄物(radioactive waste)が含まれていたらしい。

 これは早くも1980年代から指摘されてきた問題で、主犯と目されるシンジケート(組合)はイタリア国内をはじめとするヨーロッパ全域から秘密裏に放射性廃棄物を持ち込み、それを満載した老朽船を、地中海海域はもとよりインド洋のソマリア沖などにも投棄してきたとみなされている。

 イタリアのNGO、「レガムビエンテ」(Legambiente)は、1994年以来、地中海海域に、毒物や放射性廃棄物を積載した船舶が少なくとも40隻ほど故意に沈められたものと考えている。もしこれが事実なら、ヨーロッパ文明を育んだ母なる海の底には、人知れず、膨大な核廃棄物が横たわっていることになる。

 真の危険が陽の目をみるのは、残念ながら、数百のバレルが腐敗して分解するか、何者かによってこじ開けられるときだろう。けれど皮肉なことに、地中海の沁みるような美しさは、いまこの瞬間にも進行中の大災害をおくびにも出そうとしない。

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