【和歌山】自殺の名所「深山陸軍墓地」名もなき兵士たちの想いの果てに…

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 和歌山県和歌山市・加太近くの山深い場所に、ひっそりと佇む墓石群がある。誰も訪れず、ただひたすらに、流れる時間に身をゆだねるかのように存在するそれは、この一帯がいわゆる「自殺の名所」ということもあって、極めて奇異な印象を、訪れる者に対して与えている。

 明治維新後の19世紀後半、欧米列強がひしめき、互いに凌ぎを削る外の世界へと飛び出した日本は、いわゆる「富国強兵」を旗印に、急速な工業化・近代化を推し進めた。そうした流れの中で、当時の政府および軍部は、本格的な国防に着手する。各地の要衝には、砲台や要塞が配備された。近畿地方においても、当時、東京と同じかそれ以上に、経済的に重要な意味合いを持っていた大阪の守りを固めるべく、紀淡海峡にいくつもの砲台・要塞が設けられた。淡路島側に生石砲台・高崎砲台・成山砲台・赤松砲台・伊張砲台、本州側には加太・深山・友ヶ島に、本格的な防衛拠点が複数置かれるなど、当時の政府・軍部が、いかに当地を軍事的に重要な意味を持つものとして位置付けていたかが、その頃の史料を見てもひしひしと伝わってくる。この一帯の防衛ラインの構築は、当時の政府にとって、一大国家プロジェクトともいえる壮大なものであったのだ。

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