■石川くんは本当に写真が好きなんだなって思った(服部)
―― 普段は全く違う世界で異なる表現をなさっているお二人が、ひょんな縁からパーティーを組みサバイバル登山をするなかで、お互いの第一印象から変わったことはありますか?
石川:服部さんは想像したより優しいって思いました。
服部:まわりからはスパルタ系だと思われているみたいだけど、他人にスパルタしてもしょうがないんでしないですよ。だからか、ちょっと付き合った人に「意外と優しいですね」って言われることは珍しくないです。でも、別に優しいわけじゃなくて、最初に怖い人だっていうイメージに思われているからだと思います。
石川:サバイバル登山に対してもそういう思い込みはありました。
服部:サバイバル登山そのものにストイックなイメージがあるんだけど、やってみたら全然ストイックじゃない。
石川:というより、普通というか自然というか。苦しむために無理してやるわけじゃなくて、山を身体で感じるための方法としてサバイバル登山があるっていう。
服部:さすが一緒に行っただけのことはある。ちゃんと通じてますね(笑)。
―― 服部さんは、石川さんへの印象が変わりましたか?
服部:犀川の源流で撮った写真を見たときに「写真が本当に上手だな」って思いました。僕も同じものを撮ったんだけれど、見ているものが違う。そこで石川くんの技術的な面を信用しました。和賀山塊に行ったときに1日だけ移動しない日を作ったんです。僕は釣りをして、石川くんは写真を撮る。そのときに「こいつは本当に写真が好きなんだな」って。「好きこそものの上手なれ」じゃないけれど、これはすごく重要なこと。山登りも釣りも「やりたいやりたい」って言うヤツはたくさんいる。でも、実際にやるヤツはそんなにいない。「物事には『やるかやらないか』という状態しかなくて、その真ん中の『やりたい』っていう状態はない。『やりたいやりたい』って言っているヤツは所詮やらないんだよ」ってよく言うんですけれど、石川くんは違う。写真が本当に好きだからガンガンやるんだなって。
―― なるほど。
服部:あと、カメラが壊れたときに「カメラなんて壊れりゃいいんですよ。壊れるくらい使うのが写真を撮るってことなんです」みたいなことを、120万円のカメラを手にしながら言ってた(笑)。写真が本当に好きで、人間が活動する、やりたいことやるっていうことがどういうことなのかがわかっている。やっていることは違うけれど、僕と根っこは同じだということがよくわかりました。