―― 街や人とは真逆の、剥き出しの自然を撮るなかで気づいたことはありますか?
石川:向き合いかた次第で街も山と変わらないって思いました。
―― 変わらない、とは?
石川:全部が生きてるんだなって。それは怖いことだしすごいことだって。
―― どういう意味でしょう?
石川:安全とか安定なんてどこにもないってことです。生きることは常にギリギリで、それが当たり前なんですよね。どこかを安定させようすればどこかにズレが生じる。安定って一瞬だけなんですよ。「食うことと食われることは一緒にあって当然。食っているのだからいつかは食われる」って服部さんも本のなかで書いてるけれど、山は本当にそのままでした。それは街でも変わらないっていう。それなのに、自分たちは何を考えてるのかな、って。それくらい知っているはずなのに、自分たちが理想とする安全がずっと続くって考える自分たちはクソだなって。でも、その理想が成り立たないこともクソだと思うし、矛盾してますよね。