■そのままの自分で山を感じたいからトレーニングはしない(石川)
―― 6月にテストで石川県の犀川の源流域へ、本番は9月、当初は北アルプスに行く予定が天候不良で秋田県の和賀山塊に変更になったと聞いています。場所選びに理由はあるのですか?
服部:犀川には食料になる魚がたくさんいるのを知っていたのと、SLANTが金沢だからちょうどいいと思って。それと、6月はまだ雪が多くてサバイバル登山がやりにくいんですよ。犀川は標高が低いから上手くいくかなというのはありました。北アルプスはちょっとしたサービス。森から岩場へって、いろいろな風景が見られていいかなと思ったんです。黒部に入れば魚もたくさんいるし、自分が行きたかったというのもありますね。
―― 和賀山塊は原生林ですが、サバイバル登山としての難易度はどの程度なんでしょう?
服部:クライミングの技術的難易度とか食料調達の難易度、肉体的な辛さとかいろいろな要素があるんですけれど、真ん中くらいかな。初めての人でもなんとか行けるレベルです。
―― 事前に準備したことは?
服部:犀川行きのあとにトレーニングしろって言ったよね。かなり強く。山登りなんて体力があるだけ有利なんですけど、そのまま行くと辛くなるかもしれないとは思いました。でも、「トレーニングはしません」って言ったんだよね。時間がないからって。
石川:やったのは、階段上りくらいですね。数か月だけ だから、トレーニングというよりも慣らしくらいの感じだと思います。
―― トレーニングをしなかったのは時間の問題だけじゃないですよね? 石川さんは天の邪鬼だから。
服部:そうなの!? 「木村伊兵衛写真賞を取って忙しいから」とか言ってたじゃん。「そんなことをするなら写真を撮ってるほうがいい。トレーニングそのものの優先順位を高くできない」って。それで納得して「じゃあ階段だけ上っとけ」って言ったんだけど。
石川:(笑)。継続してトレーニングする時間が取れなかったのは嘘じゃないんです。でも、服部さんにしたら迷惑な話だと思うんですけれど、特別な準備をしない状態で山に入って、そのまま感じられることを感じたいっていう思いがあって。サバイバル登山に合わせるのじゃなくて、いまの自分がサバイバル登山を体験するなかで何を感じるかを知りたかったんです。
――実際の現場では、体力的に大丈夫だったんですか?
石川:服部さんがうまくコントロールしてくれた部分はありますよね。僕は山のことは何も知らないから。