―― お話を聞くにつれ、登山も写真も同じじゃないかと考えるようになりました。
服部:人間の表現なんてほとんど一緒ですよ。結局は自分に何ができるのかを表現したいわけで、それには欲望だけじゃなく技術、テクニックが必要になるのは写真でも登山でもなんでもそうだと思うんです。ただ、登山に関しては死ぬことがあるんで、そこが決定的に違う面なのかもしれない。逆に、そんなに特別視することでもないのかもしれない。そこはちょっとわからないですね。ただ、写真で生きていけるくらいの金が稼げるのかっていうのが心配です。
石川:(笑)。僕もそこはやってみなきゃわからないくらいの所なんですよ。それこそ服部さんの登山だって……。
服部:登山も食っていけないね。例えば、サッカー選手は最終的に「サッカー」っていうパフォーマンスを売っているんだと思うんです。でも、登山のパフォーマンスそのもので生活している人は、少なくとも日本人にはほとんどいない。山を相手に肉体表現だけで生きている人はほとんどいないんです。だから、僕は原稿を書いたり雑誌を作ったりしているわけですけれど、写真はどうなのかなって。これを家に飾ろう、そのために何万円も出して買おうっていう人っているんですか?
石川:ちょっと逃げていいですか(笑) 作品を観てもらうことについては、そこにどれだけ向き合ったかとか、気持ちを込めたかとか、時間や労力、お金をかけたとかが見られる気がするから、自分としてはそこをどれだけフルスイングでやりきれるか、みたいなことしかないんですよ。