“超・地獄耳”が手に入るスマート補聴器「TCAPS」を米軍が実用化し兵士2万人に配備へ!

 スマートフォン、スマートウォッチ、スマートグラス……従来の機能に数々の最新テクノロジーを盛り込んだ「スマートデバイス」が、ここ数年で一気に身近な存在になりつつある。そして今度は、スマート補聴器(もしくはスマート耳栓)とでもいうべき“耳に装着する”スマートデバイスの登場だ。いち早く詳細についてお届けしよう。

超・地獄耳が手に入るスマート補聴器「TCAPS」を米軍が実用化し兵士2万人に配備へ!の画像1画像は「The Daily Mail」より引用

■機能のてんこ盛り、耳につけるスマートデバイス

 米公共ラジオ「NPR」が今月3日に報じたところによると、このたび米陸軍は約2万人の兵士に対し、耳につけるスマートデバイス「Tactical Communications and Protective System、TCAPS」(戦術コミュニケーション・防御システム)を装備させることを決定した模様だ。

 このTCAPS、一見するとこれまでのイヤフォンや補聴器と大差ない構造のように思える。しかし、その機能は驚くほど高性能だ。まず、戦場で発生する発砲音や着弾音などの爆裂ノイズを最小85デシベル(地下鉄車内レベル)まで軽減。銃弾の飛び交う戦場で、兵士の聴覚を保護する(耳栓機能)。そして、隠れている敵が動いたわずかな音さえも拾いあげ(補聴器機能)、さらにクリアな音で仲間との双方向コミュニケーションさえ可能になる(ヘッドセット機能)というのだ。これらの機能をすべて搭載し、過酷な環境において人間の聴覚を保護するとともに拡張する、まさに“スーパー地獄耳デバイス”の名にふさわしい仕上がりとなっているようだ。

 装着も実に簡単だ。耳栓のようになっているイヤープラグ部分を外耳道に挿入すると15~20秒であらゆる耳の形に完全にフィット。コードでつながった本体ユニットで、ボリュームなどを操作する。使用環境や衛生状態にもよるが、そのまま1週間~1カ月間(!)継続して作動することも可能だという。ちなみに、製造コストは1システムにつき2,000ドル(約21万4,000円)とのこと。

■陸軍の“悩み”がスーパー地獄耳デバイスを生んだ!

 TCAPSの開発は、2007年にバージニア州モンロー砦にある米陸軍訓練理論司令部でスタートした。プロジェクトメンバーのジャック・ムーア陸軍大尉は、その経緯について次のように語っている。

「これまで、訓練や戦闘で聴覚を失った兵士に対して、多額の手当を支給してきました」
「それを本気でどうにかしようと考えた時、このような汎用性の高い装備が構想されたのです」

 最前線から帰還した兵士の実に半数以上が、爆音によって聴覚に何らかのダメージを負っているとのデータも存在するのだとか。開発が決定した時点でも大きな話題となったようだが、今回とうとう実用化が果たされ、実戦配備される見通しであるというわけだ。

 国立ウォルター・リード陸軍病院(聴覚スピーチ病理学センター)のダグラス・ブルンガート博士や、陸軍外科医(聴能学顧問)のクリステン・カスト中佐らもTCAPSの有用性に太鼓判を押す。それほど複雑ではない構造も、高い信頼性につながるとのことだ。


 さて、耳を保護するとともに機能を拡張するTCAPS、私たちの日常生活でもさまざまな応用が考えられる。「戦争は発明の母」という言葉もあるように、ご多分に漏れず、まずは米軍で実用化されるわけだが、スピンオフ(民生技術への転用)への期待も高まってくるだろう。近未来、私たちは全身をスマートデバイスで覆われているのかもしれない。
(編集部)

参考:「The Daily Mail」、「NPR」、ほか

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