リトアニアの「ミイラ医療」の実態 ― 200体のミイラが自ら検診にやってくる“死の部屋”で行われていること

■ミイラの健康状態を調べることに成功

 約40年の月日が流れ、ピオンビーノ=マスカリ博士の登場となる。マルキリーズ博士はミイラの年代を調べていたが、ピオンビーノ=マスカリ博士は「彼らがどう生きて、どう死んだか」を明らかにするのが目的だ。

 2008年に始まった新しい研究では、無傷のミイラは200体のうち、わずか23体だけだった。その中から状態の良い7体を選びCTスキャンしたところ、見事ミイラの健康状態を調べることに成功したのだ。

 肥満体の男性は、脊柱、骨盤、両膝に関節炎を患い、さらに右の肋骨を骨折、甲状腺には腫れが見つかった。おそらく甲状腺腫によるものと診断された。また、肥満女性からは腰に良性腫瘍が発見。この2体から動脈血栓も発見されたが、これは現代人の食生活で起こるものと考えられていた。その他のミイラからも虫歯、歯周病、くる病、腸内の寄生虫等が見つかっている。

「このミイラたちを“考古学的、文化的価値のあるサンプル”とは見れないんです。まるで、彼らが自分たちの健康状態を知りたくて、自ら進んで検診を受けにでも来てる感じなんです」と、博士は笑う。なるほど、研究者冥利に尽きるようだ。

リトアニアの「ミイラ医療」の実態 ― 200体のミイラが自ら検診にやってくる死の部屋で行われていることの画像3HISTORY.com」の記事より

 あるときはナポレオン、またあるときはナチスドイツ、そしてソビエトに占領されたヴィリニュスの町と教会。ミイラたちは今、歴史の目撃者として現代に蘇り、自分のストーリーを語る順番を、静かに地下室で待っているのかもしれない。


参考:「The New York Times」、「HISTORY.com」、ほか

文=佐藤Kay

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