バッキバキに剥き出しの“東京”を撮る写真家・新納翔! 圧倒的な都市の“核”を捉えた写真集『PEELING CITY』を語る!


新納「でも、浪人時代に奈良原一高っていう写真家の『人間の土地』という作品を図書館で見て、稲妻に打たれたような気持ちになって、気づいたら写真家を目指してしまったので、仕方ないですね」

 海外での評価も高い奈良原一高とは、リアリズムが支配的だった戦後日本の写真界にあって、前衛的な独自の美意識をもとに「パーソナルドキュメント」という手法で写真を表現した作家だ。新納氏がそれまで持っていた写真というメディアの概念を覆した。

新納「当時の僕にとって写真は『いろいろな所にある情報を伝える薄っぺらいツール』だったんです。けれど、奈良原さんの写真はそういう写真とは違う、半端ない表現力とエネルギーを持っている物だと思いました。ありふれた印刷物、インクの集合体として見ていたのが、その中に大きな世界が広がっているように感じた。その『人間の土地』を見た時に『写真家にならないといけない』と思ったんです」


 偶然出会った写真に圧倒され「写真を撮ろう」「写真家になりたい」と思う人はいるだろう。しかし、「写真家にならないといけない」と思わされたというのだから、その体験はよほど強烈だったのだろう。

新納「『写真と撮りたい』とか『何かを撮ってみたい』ではなく『写真家のトップになりたい』って、普通とは順番が逆だったんですが、今でもその気持は忘れていません」

 1月25日より吉祥寺のbook obscuraにて『PEELING CITY』の写真展が催されている。写真家、新納翔が目の当たりにしてきた東京の変容を目の当たりにする絶好のチャンスだ。

■作家プロフィール

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新納翔(にいろ しょう)
写真家。1982年横浜市生まれ。麻布高校卒業。早稲田大学理工学部応用物理学科中退。19歳の時に奈良原一高の『人間の土地』に出会い写真家を志す。以来、東京を中心に再開発により失われていく都市の風景を記録し続けている。これまで発表した写真集に『築地0景』(2015年 ふげん社)、『山谷』(2011年 Zen Foto Gallery)『Another Side』(2012年 リブロアルテ)がある。現在、新潮社web「yom yom」にて「東京デストロイ・マッピング」を好評連載中!
http://nerorism.rojo.jp/

■写真展info
★新納翔写真展『PEELING CITY 都市を剥ぐ』
会場:book obscura
住所:東京都三鷹市井の頭4-21-5-103
開催期間:1月25日〜2月12日まで
営業時間:12:00〜20:00
定休日 火曜日、水曜日
https://bookobscura.com/

★大阪での展示も決定!
新納翔写真展『PEELING CITY 都市を剥ぐ』@大阪
4月13日(金)〜4月24日(火)
場所:gallery176  詳細は近日公開予定
http://176.photos/

■写真集info

PEELING CITY ― 都市を剥ぐ
体裁 上製本クロス装 249mm×255mm×17mm 138ページ
デザイン 伊野耕一(INO DESIGN)
発行元 ふげん社
価格 5,500円(税別)


《各コメント》
■「山谷や築地市場に密着して撮影した写真で知られる新納翔の新作写真集は、東京を中心に、一回り大きな視点で撮影されたスナップショットを集成したものだった。東京オリンピックへ向けて、急速に変化していこうとする都市の表層を引き剥がし、欲望のうごめきを引き出そうとしている。的確なカメラワーク、巧みな写真の配置は、高梨豊の1960年代の名作「東京人」を思い起こさせる。「TOKYO1964」から「TOKYO2020」へ。新納と高梨の写真を比較してみると、2つの時代の「差異と反復」が、シンクロして浮かび上がってくるのではないだろうか。」
飯沢耕太郎(写真評論家)
出典元:日本カメラ11月号 飯沢耕太郎の歩く写真評論家「今月の注目写真集」

■「日本の都市は少しも構築的に作られていないので、真実に近づくために、脱構築の方法はおよそ有効ではない。新納氏はそこでPEELINGという方法を考え出した。鋳鉄のもろくなっている上皮がはがれること、剥脱(はくだつ)することという工業用語だ。東京にこの方法をラジカルに適用すると、はがれた上皮の下からすぐにピンク色の皮下質が出てくる。粘液がにじみ出てくる。写真は気配を撮るものという通念を超えて、彼は都市の上皮の下の唯物論的運動を撮ろうとしたのである。」
中沢 新一(文化人類学者)

■「「山谷」、「築地」と、東京の潜在的な質感を入念に撮ってきた新納翔さんの「PEELING CITY」(ふげん社刊)を拝見した。「皮をむく」などという表現よりも、中沢新一氏が印象を記すように、「剥奪」されていく(現在進行形として)都市のイメージが、写真家の疾走感とともに再現されている。(中略)新たなシューターの意欲的な仕事をうれしく思うと同時に、路上でシャッターを押すことの確信を、まだ私もしっかり共有していたいと思った。」
大西 みつぐ(写真家)

■「昔々、サロンピクチャーと言うのが流行った 散々バカにされたもんだ。今のSNSで2段飛ばしと言う白茶けた無内容な写真がそれにあて嵌る。SNSで最近輝く超新星のような写真を発見した新納翔。アクチュアリティーのあるシヤープでコントラストの強い作品である。西日が人物を魔法のように浮かび上がらせ私の心が躍る、ビルの上に重い黒雲が見える作品が私の心を明るくする・・・。輝く新しいドキメントの誕生である。」
田村彰英(写真家)

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文=渡邊浩行

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