新宿のホストが体験した本当にあった心霊話 ― 体を揺らす真紅のワンピースの女(川奈まり子の実話怪談)

作家・川奈まり子の連載「情ノ奇譚」――恨み、妬み、嫉妬、性愛、恋慕…これまで取材した“実話怪談”の中から霊界と現世の間で渦巻く情念にまつわるエピソードを紹介する。

 

新宿のホストが体験した本当にあった心霊話 ― 体を揺らす真紅のワンピースの女(川奈まり子の実話怪談)の画像1イメージ画像は「Getty Images」より引用

【十三】女

 20年以上前のこと。当時18歳だった鈴木芳樹さんは年齢を偽って新宿のホストクラブで働いていた。店の近くのアパートを同い年の同僚と家賃を折半して借りて2人で住んでいたが、酔いつぶれて店内で眠ってしまうことも多く、すると起きた途端に店の掃除をするはめになった。眠る長さによっては、掃除が済んでも店で開店の時刻までダラダラしていた方がラクだったから、アパートに帰らない日も多かった。

 アパートを共有している同僚とは、お互いに「ヨシキ」「カズヤ」と源氏名で呼び合いながら仲良くやっていた。法律ではまだ飲んではいけないことになっている酒を飲んでいる者同士、新米ホスト同士、同病相憐れむといったところで、深い話はしなかったが、気持ちは通じ合っていた。

 店に来る女性客には風俗嬢が多く、若いヨシキこと鈴木さんとカズヤのウケは悪くなかった。隠しきれない初心なところが可愛いと思ってもらえるようだった。相棒のカズヤの方が女慣れしていて、器用に金を引っ張っていた。鈴木さんはカズヤを羨ましく思いつつ、女性に恨まれるのが怖くて金を出させる段になるとどうしても遠慮がちになった。

 女性の恨みを恐れた理由のひとつは、勤めているホストクラブに女の幽霊が出ることにあった。

 働きだした頃、鈴木さんは店で居眠りすると必ず赤いワンピースを着た女の夢を見ることに気がついた。

 普通の夢は、目が覚めると「夢を見た」という曖昧な感触だけを残して、あらかた内容を忘れてしまうものだが、このホストクラブで眠ったときに見る夢は起きても消え去らなかった。

 むしろ日増しに赤いワンピースの女の像が描き足されてはっきりしてくる。

 しかも寝れば必ず夢を見た。見ないということがないのだ。

 夢に出てくる女は毎回、同じで、身に着けている衣裳にも変化はない。真紅の袖なしワンピースで、店の客に多い、夜の女性のような気がする。髪や肌の美しさから歳が若いことが推測できる。

 綺麗な女だな、と、鈴木さんは思った。だからそんなに怖くはないが、何度も見るうちに不思議な気がしてきて、カズヤに打ち明けてみたのだった。

 すると驚いたことに、カズヤも同じ夢を見ていた。

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