量子論の「壁をすり抜ける」トンネル効果の観測実験がヤバ過ぎる! やはり時空を超越か… 結果に驚愕

■量子論の謎を解き明かす

 今回の研究は、3年間に及ぶ国際プロジェクトの集大成で、研究チームは豪グリフィス大学の研究施設「Australian Attosecond Science Facility」にある非常に強力な超高速レーザーを用いて実験を行っている。

「実験的不確実性の範囲内で“ゼロ時間のトンネル抜け”と理論上一致することが判明しました」(ロバート・サン氏)

“トンネル”を抜ける所要時間を測定するためにアト秒レーザーの超高速光パルスが使われたのだが、この精度をもってしても水素原子が“トンネル”を通過する時間を計測することはできなかったのだ。

 このような“トンネル効果”は我々の日常生活ではあり得ない現象とされるが、実は電子顕微鏡やトランジスタなどの機器で、すでに活用されている。

量子論の「壁をすり抜ける」トンネル効果の観測実験がヤバ過ぎる! やはり時空を超越か… 結果に驚愕の画像3
画像は「Wikipedia」より

 また、量子論の世界で“量子的重ね合わせ”と並んで奇怪な現象に“量子もつれ”がある。量子もつれは、遠く離れた2つの粒子が互いに影響を及ぼし合い、一方を測定するともう一方の状態がすぐさま決定するという性質なのだが、この現象は時空を超えているといわれている。つまり、量子もつれの状態にある2つの粒子はどんなに離れていても空間・時間を超越し、瞬時に影響を及ぼし合っているのである。

 ということはこの量子もつれの現象と同じく、トンネル効果もまた我々の持つ時間の概念を超えている現象なのかもしれない。

 サン氏は将来的にはアト秒よりも1000倍短い時間を計測できるゼプト秒レーザーを使った実験で量子論の世界のメカニズムを探る研究を思い描いているという。そして、こうした研究を突き詰めていくことで、一般的な物理学と量子論の世界の根本的な違いがどこにあるのかを明らかにすることが期待されているということだ。

 かくも摩訶不思議な量子論の世界なのだが、たとえほんのわずかずつだとしてもその謎が解き明かされていくことを待ち望みたい。


参考:「Cosmos」、ほか

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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