日本の大麻問題のヤバさ・稚拙さ・陰謀を“内側”から全暴露! 製薬会社、政治、法律…絶対に報じられない真実のオンパレード<高樹沙耶×石丸元章連載>

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●厚労省関係の人がプライベートで対話に参加

石丸 あ、ネクタイの方が挙手されていますが……まさか、〝麻取〟ではないですよね。

聴衆④ いえいえ、厚生局麻薬取締部=マトリの人間ではありません。ただ、立場としては微妙なところがあって、わたしは薬物依存者支援施設、「ダルク」の支援をずっとしています。ダルクの周辺では、厳しく取り締まりでは解決しないので、ハームリダクションの方向にむかっているんです。 

石丸 ハームリダクションとは……

高樹 ただちにドラッグをやめられることは、「依存症」などの疾患としての理由があってできないけれど、やめられないことで起こるリスクを軽減させるようにするという――ことですね。

聴衆④ 薬物使用については、問題があれば治療をしていきます。そして、それとは別に、プッシャーを管理下に置いて、供給方面からドラッグの流通をコントロールしたほうがいいという考え方があります。WHOもそういう考え方になっているんですよね。にもかかわらず、日本の現状はそれに逆行している。なぜなのだろうか?

 また、現在の日本では法律で厳しく薬物を規制していますが、戦時中は覚せい剤=ヒロポンを工場労働者に増産のために「猫目錠」として、軍隊で特攻隊員などに恐怖心を取り払うために「突撃錠」として支給していた。そういうことに対して、反省、総括をしなくていいのかという。以上、2点についておうかがいしたいのですが……。

石丸 最初の質問に関してですが――大麻が合法化されたら、取り締まり部門は人員も権限も予算も縮小されて、職員たちはリストラされてしまう。そういう側面もあるのかな。

高樹 理由はひとつではないと思いますが、そういう面もあるでしょうね。アメリカで禁酒法が廃止されたとき、それまでお酒を取り締まっていた役人は大麻を担当するようになったという(笑)。ただ、日本はきちんとした民主主義がないということが、大麻の問題から見えてくると思うんです。悪法も法と諦めないで、自分たちの生活をよくするためには、自分たちで頑張らなければならない。大麻の問題が、そういうことを考えるきっかけになればいいなあと思っています。このトークイベントにしても、幅広い世代の方が集まってくれていて、いっしょに考えることができますからね。

石丸 もうひとつ、戦中、薬物を戦争に利用していたという問題ですが、孫さんはご存じでしたか?

 もちろん、知っていました。調べてみて、何をやっとるんやろと思いましたが、大麻と覚せい剤は別の問題ですからね。この国の法律はボクらでもおかしいと思うところがあるので、修正していく必要があると思っています。

石丸 孫さんはダルクにどういうイメージがありますか?

 滋賀県にもダルクがありますが、そこの人がイベントを主催して……ボクも薬物をやめているんです。ハードドラッグをやめて、56kgも肥ってしまったんですが、自分の思いを伝えようとイベントで歌った。ダルクもいろいろあるんでしょうけれど、ボクの友だちがハードドラッグに手をだしたら、しばいてもやめさせようと思う。

聴衆④ 自分がダルクを支援している理由は――ダルクは、ただクスリをやめさせるだけの組織ではないところです。こういうことを言うと立場上本当はまずいんですが、実際問題、世の中には、心に傷を負って、ドラッグがなければ死んでいたのに、ドラッグのおかげで生き延びることができたという人間もいる。しかし、そのままドラッグを使い続けていると、死に近づいていってしまう。ですから、彼らはただ「ドラッグを使わない」ということでなく、「使わなくてもいい生き方」を目指している。そこに共感するところがある。使うか、使わないかというのは、次元が低い問題ですからね。

高樹 今、世界では薬物依存を犯罪から治療すべき病気という考え方になっていて、WHOやアメリカですらドラッグを取り締まる政策は間違いであったと認め始めているんです。ですから、罰を与えるだけでなく、なぜ手を出してしまって、依存してしまうのかを社会全体で考えていかなければならないと思うんです。大麻は依存性は低いと言われますが、それでも依存してしまう人間はいます。そういうことについても、今後、みんなで考えていきたいと思います。

石丸 そもそもドラッグを生み出したのも、禁止したのも人間で、ドラッグを楽しんだり、非難するのも人間だけ……。ほんの少量〜の物質を摂取しただけで、精神状態が変容して、1分前の自分とは異なった自分として世界を認識してしまう。 ときにこれには、大変な危険も伴うわけですが、そういうことに興味を抱き、そういう行為を通して世界を再認識していこうとする――自分はこれを、とても文明的な、人間しかやらない試みだと思っています。法律的な白/黒の二元論から離れて、少なくとも対話的な議論の上では、さまざまな、わたくしたちの社会と大麻との関わり方の可能性を想像していくことは、それ自体に意味があるのではないかな。

――ということで、大阪・ロフトプラスワンWESTで行われた「高樹沙耶大麻を巡る対話10番勝負」は、ケンケンガクガクとにぎやかに開催された。当然ながら会場では、日本の法律が順守されていたので、大麻を持ち込んだり吸ったりする人間はいなかった。と、ここであらためて言う必要はないのだが、心配する人もいるので一応断言しておく。セーフ! みんなご協力ありがとう。さて。次号からは高樹さんはまた石垣島へ、わたくしは東京とそれぞれの持ち場に戻って、さまざまな会話をしていくつもり。よろしくね~。

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◎高樹沙耶(たかぎ・さや)
1963年8月21日、静岡県生まれ。元女優、元作詞家、石垣島のキャンピングロッジ 「虹の豆」オーナー。1983年に主演映画『沙耶のいる透視図』で女優デビュー、映画&ドラマシリーズ『相棒』ほか、数多くの作品に出演、人気を呼ぶ。著書に『贅沢な暮らし—衣食住が育む「心のラグジュアリー」』(エクスナレッジ)、『ホーリープラント 聖なる暮らし』(明窓出版)ほか
Twitter: @ikuemiroku

◎久保憲司
1964年、大阪府生まれ。写真家、音楽評論家、オルガナイザー。1980年代からイギリスに渡り、初期のレイヴを体験。その後、写真家、音楽評論家として活躍。著書に『ロックの神様』(マーブルトロン)、『ダンス・ドラッグ・ロックンロール 誰も知らなかった音楽史』(音楽出版社)ほか。WEBマガジン「久保憲司のロック・エンサイクロペディア」を配信中
Twitter: @kuboken999

◎孫GONG
1987年5月1日、京都府生まれ。ラッパー。高校中退後、京都・新京極の服屋で働きながらフリースタイルを始め、関西を拠点に精力的にライブ活動を行う。2015年8月、1stシングル「孫GONG / 花火 feat.JAGGLA,紅桜」prod. by TEAM2MVCHでデビュー。同年12月1stアルバム「祭遊鬼」、昨年 6月 に2ndアルバム「狂都」をリリース
Twitter: @SON_GONG

文=石丸元章

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