「量子力学は間違っている」説が浮上! アインシュタインと湯川秀樹は知っていた!!
■量子力学を決定した中性子の発見
問題となるのは、原子核の構成物質である。かつて、原子核は陽子と電子で構成される核内電子説が優勢だったが、イギリスの物理学者チャドウィックが中性子を発見したことで状況が一変する。中性子の発見と同時にドイツの理論物理学者ハイゼンベルクは、核内電子説を廃棄し、現在の原子核―陽子と中性子を発表。それ以来、原子核は陽子と電子ではなく、陽子と中性子から出来ている、と見なされるようになったのだ。
しかし、ハイゼンベルクの論文を読んだ湯川博士は、メモ書きに「原子核内部にある電子を否定することは妥当なのだろうか?」と書き残している※。
現在では常識になっている原子核の構造に湯川博士は疑問を抱いていたのだ。
■電子は雲になった
量子力学は1913年に発表されたボーアの原子模型を満たすために考えられた。ボーアの原子模型は、プラスの電荷を持つ原子核の周囲をマイナスの電子が回っているという構造を持つ。通常ならプラスの原子核にマイナスの電子が引きつけられ、落下してしまうが、なぜ、電子は原子核に落ちていかないのかを説明することが量子力学を誕生させた。
1924年、フランスの物理学者のド・ブロイは、原子核周囲の電子は波の一種であるとする論文を発表した。粒子の波動性を指摘したこの論文は、「ド・ブロイ波」と呼ばれている。電子を波として記述するのに使われたのが波動関数だ。波動関数は19世紀に発達した熱力学―統計力学で使われていた数式で、多数の粒子をまとめて統計的に扱うために使われていた。
また、熱力学の成果に「空洞放射」と呼ばれる製鉄所の炉の内部の温度を計測するために考案された方程式があった。通常、熱の温度は連続していると考えられていた。しかし、熱力学が導いた炉の温度を表す方程式は、波長の整数倍の値をとるのだ。飛び飛びの値をとる“量子”という概念がここで誕生した。量子はボーアの原子模型で、電子の軌道が飛び飛びの半径を持つことと合致した。
ド・ブロイ波は、このようにして受け入れられ、量子力学の基礎となった。現在では、ド・ブロイ波は、原子核周囲の電子は、雲のような状態で存在していると解釈されている。量子力学の根本には熱力学が存在するのである。
※「要するにこの論文の特徴は核Electron (核内電子)の問題に関係した難点を Neutron (中性子)自身に押しつけて了って、核が Proton(陽子)、Neutron(中性子)のみより構成せられるという考えが原子核の安定性に就いて定性的に如何なることがいいうるか考察したるものであって、核内に於いては electron(電子) の存在を否定することが果して当を得て(い)るかどうか、にわかに判断することが出来ないが、核を構成する単位粒子の間の相互作用がもっと明らかにされぬ限り、この論文の程度の漠然たる推論で満足する他ないであらう」(京都大学より)
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