元ホストが語った「本当に怖い三角関係の怪談」が恐ろしい! 幸せな女を襲う生霊の闇…川奈まり子実話怪談『いきすだま ~去る女~』
黄昏時、そろそろ出勤の支度をしなければ思っていたところへ、セイラから電話が掛かってきた。
「あのね、うちの伯母さん、霊視が出来るねん。その伯母さんのとこに、ナナと一緒に、首を絞めたオバケのことで相談に行っとってん……」
なんでも、憑いている霊の姿や来歴が読み取れるが、祓う力は無い、霊視専門の霊能者が親戚におり、家も近かったため、2人で訪ねてみたのだという。
すると、伯母さんは、ナナを一目見ただけで、こんなふうに言い当てたのだそうだ。
「ナナが来る前に、あの部屋で貴司さんと同棲しとった女の人が生霊になって現れたものやさかい、きっとまた同じことが起きるに違いあらへんって。そんなんを聞かされたものやさかい、ナナは怯えて、今は貴司さんと話すのも怖いって言うとぉ。……貴司さん、あそこで誰かと同棲しとったん?」
――どころか、あのベッドでアケミと数え切れないぐらい愛し合ったよ!
まさかそうも言えず、彼は「うん」と短く答えた。
「そうなんや……。その人って、年上で痩せとったんやろう? 伯母さんが、細うて綺麗な中年女性やて言うとった。貴司さん、その人になんかしたん?」
「ううん。僕はなんも……別に……」
――別れた後も彼女の部屋にちゃっかり住まわせてもらいながら、新しい恋人を連れ込んだだけなんだ!
「怒らせるようなことを、したんちゃうん? とにかく、あれが出ぇへんくなるまで、ナナはそこには帰らへんって言うてんで!」
電話の後で、貴司さんはアケミとの別れに際して、自分がほとんど彼女を引き留めなかったことに、今さらながらに気がついた。
引き留めず、内心、好都合だと思っていたのだった。
その日は、いつもより早く、宵闇が迫る前に家を出た。
影が濃くなるに従って、アケミの気配が迫ってくるように感じた。
帰宅は逆に遅らせて、すっかり明けきってから店を発った。
彼は、アケミが出ていってから、この部屋で夜を過ごしたことがなかったことにも、このときになって、ようやく思い至っていた。
ナナと抱き合ったのも、明け方や日中ばかりで、夜ではなかった。2人とも夜の仕事で、休日は遊びに行った先に泊まることが多かったからだ。
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2024.10.02 20:00心霊元ホストが語った「本当に怖い三角関係の怪談」が恐ろしい! 幸せな女を襲う生霊の闇…川奈まり子実話怪談『いきすだま ~去る女~』のページです。怪談、川奈まり子、情ノ奇譚、生き霊などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで