レズビアンはどの程度ペニスを許容するのか? 無責任な「LGBT差別解消」が有害である理由を東大教授が徹底解説!

 女同士の接触を楽しみに来たのに、♂の肉体に抱きすくめられるかもしれないとなると……? 大多数のレズビアンは安心してパーティーに参加できませんね。

 活動家たちは、「ハプニングタイム」の実態を知っていたのか? 知っていながら「股間のふくらみを押しつけられても我慢しろ」と要求したのか。万一そうだとしたら、正義感の自己満足のため大勢の性的自由を踏みにじったも同然です。いや、エロノリとは知らなかった、というなら、無知な外野の分際で現場を搔き回した罪を猛省すべきでしょう。

 GFはもともと、普段の営業ではシスもトランスも受け入れ、月一回のパーティーだけシス女性限定としていました[6]。その営業形態は、トランスの社会的承認とシスの性的自由尊重のバランスをとる工夫だったように見えます。

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 しかし、パーティーにもトランス女性を迎え入れたらどうなるか。トランス女性は、普通に歓談してくれていたLさんたちが、部屋の明かりが落とされたとたんスーッと自分を露骨に避けはじめる、という現象に直面するでしょう。パーティー参加を認められたことで「差別がひどくなった」と感じる羽目になるでしょう。安易な社会的承認を真に受けたがために、まわりの性的自由の壁にぶつかり、かえって屈辱を味わってしまうのです。以前私が紹介した「木綿の天井」[7]の悪循環ですね。

 無責任な「差別解消」は、配慮された人々にとっても有害なのです。レズビアンはどの程度ペニスを許容するのか。レズビアントランス女性は女装ヘテロ男性とどこが違うのか。基本的な事柄について「理解」が進まぬまま性急に「差別禁止」「差別解消」を煽ると、社会的承認と性的自由が共倒れしかねないのです[8]

 理解が増進すれば、以前「差別」とされた措置が実は良策だった、とわかるかもしれません。シス女性オンリーのパーティー設定はおそらくそれでしょう。

 自殺・売春に話を戻すと、LGBTの自殺率、GBTの売春率が高いことはよく知られています。とりわけ自殺率の高さは、根強いLGBT差別があることの証拠と言われてきました。しかし、相関関係が因果関係だとは限りません。「差別が自殺の原因だ」という理解は正しいのでしょうか? たとえばTに関しては――

 「鬱病・自閉症・統合失調症などの精神疾患が、性別違和と自殺を生む共通原因である」

 「ホルモン剤摂取が鬱の原因となり、鬱が自殺を引き起こす」

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 ……等々、「差別」が登場しない別の仮説も検証せねばなりません。差別やフォビアにばかりこだわるのでなく、あらゆる関連要因への客観的理解を積み重ねること。LGBT受容に限らず、社会改革の心得とはそういうものでしょう。

[6] 「シス女性限定」と掲示されたのは、事件発生から謝罪までの二週間だけ。騒ぎ以前は「女性限定」という表示で、暗黙にシス女性限定と了解されていた。
[7] https://tocana.jp/2019/05/post_95219_entry.html 「木綿の天井」騒動でトランス女性から性的ハラスメントを受けたのは、トランス排除的レズビアンではなく、トランス受容的レズビアンだったことに注意。
[8] GFは、謝罪以降もパーティーを開催しているが、月一から隔月に減り、ハプニングタイムの広告を控えるようになった。

文=三浦俊彦

◆三浦俊彦(みうら・としひこ)
1959年生まれ。東京大学総合文化研究科博士課程単位取得退学。現在、東京大学文学部教授。専門は、美学・分析哲学。和洋女子大学名誉教授。著書に『バートランド・ラッセル 反核の論理学者:私は如何にして水爆を愛するのをやめたか』 (学芸みらい社、2019年)、『エンドレスエイトの驚愕: ハルヒ@人間原理を考える』(春秋社、2018年)、『改訂版 可能世界の哲学――「存在」と「自己」を考える』(二見文庫、2017年)など。

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