新型コロナの「国内パスポート案」が“愚策の極み”である決定的理由はコレだ!天才・亜留間次郎が徹底解説

■移動の自由がもたらしたもの

 こうしたパスポートの移動制限を有名無実化したのは、自由と平等でも法制度でも伝染病の根絶でもありません。蒸気機関車による鉄道網の発達です。

 大量の人間が低コストかつ短時間で長距離移動できる鉄道が一般化したことにより、大半の国が陸上の国境でつながっている欧州では、実質的にパスポートコントロールが機能しなくなったのです。

画像は「Getty Images」より引用

 歴史を別の点で見れば、第二次世界大戦直後に起きたドイツの東西分断の最初の一手は、ソビエトが行った技術的な理由による鉄道の乗り入れ禁止でした。鉄道網の分断から国の分断が始まっているのです。

 冷戦終結後に移動が自由になると、パスポートコントロールは名目上の存在ですらなくなり、シェンゲン協定として後から制度が追いかける形で移動の自由が公式に認められました。

 また、移動を制限する国内パスポートは、明治になって藩同士の移動制限が撤廃され関所が無くなった日本でなくなった「あること」を復活させかねません。

 それは「飢饉」です。貴族院で元大名だった人が「明治になって不作が起きても飢饉は起きなくなった」と発言しています。これは国内移動の自由が当たり前になったことにより、その数十年前まで全国で頻繁に起きていた飢饉が起きなくなったのです。

 なぜ不作で食糧生産が減っても飢饉が起きなかったのか? それは物流網が機能していたからです。

 不作の地域もあれば豊作の地域もあり、食糧が余ってる場所から足りない場所へ自由に運ぶことができるようになったことで、餓死者が激減したのです。

 他県ナンバーの自動車が道路を走ることすら禁止すれば、その先に待っているのは物流マヒによる物資不足です。不足すれば値段は高騰して貧困は加速して食糧生産が余っても届かなくなります。
10万円給付金がいつになっても振り込まれなかったり、アベノマスクが届かなったりといった地域格差が、日常に必要な食糧ですら起き得るのです。

 国内パスポートは、世界中の国が繰り返してきた悲劇と喜劇を現代日本で再現する最悪の愚策です。

(つづく)

文=亜留間次郎

薬理凶室の怪人アルマジロ男。人間の皮を被った血統書付きアルマジロ。守備範囲は医学から工学、ノーマルからアブノーマルまで幅広く、アリエナイ理科ノ大事典など、くられ氏と共に薬理凶室関連の共著多数。単著に『アリエナイ理科式世界征服マニュアル』(三才ブックス)がある。よくわからないケダモノなのでよくわからないネタで攻めていきます。

公式サイト http://asai-laboratory.sakura.ne.jp/
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