宇宙の重さってどれくらい? 新計算結果「シグマ8テンション」の発見で、宇宙の定義激変へ!

■深宇宙研究の“パラダイムシフト”到来か

 研究チームはチリにあるヨーロッパ南天天文台が運営するパラナル天文台のデータを分析して、シグマ8を推定したのだが、その値はかつて欧州宇宙機関(ESA)のプランク宇宙望遠鏡による宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の観測テータから計算されたシグマ8と一致するものではなかった。

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プランク宇宙望遠鏡 画像は「Wikipedia」より

 プランク宇宙望遠鏡のデータ分析ではシグマ8は約0.81の値であったのだが、今回のヒルデブラント教授の研究チームの弱い重力レンズ効果を含めた計算では約0.74という値が導き出されたのである。そしてこれがシグマ8テンションということになる。

 研究チームはこのシグマ8テンションはハッブルテンションのきょうだいと例えている。シグマ8テンションの“食い違い”は統計的に有意であると考えられ、単なる偶然である可能性は350万分の1未満だということだ。

 標準モデルでは、宇宙の質量とエネルギーに占める割合は、原子等の通常の物質が4.9%、ダークマター(暗黒物質)が26.8%、ダークエネルギーが68.3%と算定されているが、このシグマ8テンションがハッブルテンションと同じレベルの統計的問題であるとすれば、宇宙論の標準モデルを見直すべきだというプレッシャーは無視できないほど強くなる可能性がある。そしてこの“食い違い”を埋め合わせるために物理学者による新たな宇宙論の標準モデルの構築が望まれることになるかもしれない。

「これが本当に標準モデルの破壊を垣間見るものになるとすれば、革命的な可能性がある」とヒルデブラント教授は語る。

 現在、人類文明のさまざまな分野で劇的な“パラダイムシフト”が起こるとされているが、宇宙論のパラダイムシフトは時代を象徴するものにもなるだろう。深宇宙の研究において今後どのような驚くべき知見がもたらされるのか期待したい。

参考:「Live Science」、 「Scientific American」、ほか

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
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