妖怪アマビエを凌ぐ「最強の護符」を発見!「疫病退散を叶える日本の護符ベスト10」を宗教学者の島田裕巳が発表!

「角大師」と同様に古くから用いられ、各地で残っている護符として「蘇民将来」(そみんしょうらい)がある。こちらは絵ではなく、「蘇民将来子孫家之門」「蘇民将来之子孫者」などと書かれたものだが、最古のものでは平安京遷都よりさらに前となる長岡京の跡から木簡が出土している。

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画像は「Wikipedia」より引用

 蘇民将来なる人物はいったい何者なのか。その伝説を記したもので最も古いのが、鎌倉時代の書物に引用されるかたちで残っている奈良時代の『備後国風土記』逸文だ。

 嫁取りのための旅の途中だった武塔天神は、将来を名乗る兄弟と出会い、宿を貸してくれないかと頼む。裕福な弟・巨旦将来がその頼みを断ったのに対して、貧しい兄の蘇民将来は宿を貸し、粟飯をご馳走するなどしてもてなした。

 数年後、嫁取りに成功した武塔天神はお礼がしたいと蘇民将来のもとを再度訪れる。子の有無を聞かれた蘇民将来が妻と子どもがいると答えたところ、武塔天神は、茅の輪を腰に着けておくように命じた。するとその夜、茅の輪を着けていない者は殺され、滅ぼされてしまう。

 武塔天神は、私は素戔嗚尊(すさのおのみこと)だと名乗り、「これから疫病が流行したときには、蘇民将来の子孫だと言って茅の輪を腰に着けていればそれを免れることができる」と告げたのだった。

「もともとは海外から入ってきた話とされていますが、どの国の話なのかは定かではありません。この伝説から、武塔天神と同一視されている牛頭天王や素戔嗚尊、薬師如来を祀る寺社では、“蘇民将来子孫家之門”などと記した護符が疫病除けとして配られています。特に有名なのが祇園祭で知られる京都の八坂神社です。前身である祇園社は牛頭天王が主たる祭神でした」(同)

 八坂神社の祇園祭は、もともとは、平安時代に京都で流行した疫病を鎮めるために始められたという。同神社などで夏に行われている茅の輪くぐりも、この伝承にまつわるものだ。

 また、蘇民将来の信仰は各地で土着の信仰などと結びつき、さまざまなかたちで受け継がれている。裸祭りとして残ったのが岩手県に伝わる蘇民祭だ。岩手といえば、コロナウイルスの勢力が全国に広がるなかで、最後の砦となっていた県でもある。蘇民祭は、同県南部の11ヶ所で例年1月から3月の間に行われている。

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